九州地方の花粉症はスギ花粉症が代表であり、西日本地域と同様の傾向である。
春のスギ花粉症、春〜初夏にかけてのイネ科花粉症、秋のヨモギ花粉症のほか、九州に多いイラクサ科のカラムシ花粉症が悪化する可能性がある。
わが国の代表的な抗原花粉と花粉症について下記の表に花粉像、植物、簡単な説明をする。
下の表の各画像をクリックすると、過去平均(’87〜’98の平均値)の旬別花粉飛散状況を、九州各地区別にグラフ表示します。
(最新の2000年〜2002年の旬別花粉飛散状況は、本ページ最下段にリンクがあります。)
分 類
|
解 説
|
画像(リンク)
|
ス ギ、
ヒノキ科
花粉症
|
特徴:
|
わが国固有の花粉症で最も罹患頻度が高い。
ヒノキ科はスギと共通抗原性を有し、同様の症状を呈する。
|
抗原:
|
日本スギ、ヒノキ科植物の花粉(約30μ)。分子量は約4万。Cry
j.1花粉の外層、ユービッシュ体に含まれる。Cry j.
2花粉の細胞質に含まれる。
|
時期:
|
2月〜4月
|
症状:
|
眼・鼻アレルギー症状、咽・喉頭、下気道症状の他胃腸、中枢神経症状など多彩。
|
地域:
|
北海道、沖縄を除く日本全国
|
備考:
|
罹患率が高く国民病と言われるようになった(奥田 稔)。大気汚染と罹患率との関係、発症年齢の低下傾向。ヒノキ科花粉症との関係、新たに注目されている。
|
|

スギ花粉
|
|

ヒノキ科花粉
|
|
|
イネ科
花粉症
|
特徴:
|
ヨーロッパにおける代表的な花粉症(眼・呼吸器症状)。
|
抗原:
|
カモガヤ、ハルガヤ、スズメノテッポウなどイネ科植物の花粉を総称(主に春咲きのイネ科)。30〜50μ。分子量1〜3万(5種類)。
|
時期:
|
4月〜6月
|
症状:
|
眼・鼻アレルギー症状、咽頭症状強い。小児では喘息症状を伴うことあり。
|
地域:
|
日本全土に見られる。スギ花粉症についで多い。北日本に頻度が高い。局所的に発症する可能性(宅地開発途中など)。
|
備考:
|
外国に比べて花粉飛散量が少ないため、喘息症状の頻度は少ないと思われる。
|
|
|
ヨモギ属
花粉症
|
特徴:
|
ユーラシア大陸とくにアジアに普遍的な多年草のキク科植物。山麓、丘陵地に自生。ブタクサと共通抗原性。秋に悪化。
喘息症状を伴うことあり、北日本に多い。
|
抗原:
|
エゾヨモギ、ヨモギ、ニシキヨモギの花粉(約20ミクロン)。
|
時期:
|
8月〜10月。九州では10月頃。
|
症状:
|
眼・鼻アレルギー症状、咽頭症状が強く、喘息を伴うことがある(我妻、藤崎)。
九州では他の抗原との重複感作例が多く、症状は軽度(宗)。
|
地域:
|
日本全土に認められる。空中花粉量としては少なく、飛散期間も短い。新潟では春のスギ花粉症より患者が多い。
|
備考:
|
風媒花、虫媒花ともにキク科植物と共通抗原性。
|
|
|
カラムシ
花粉症
花粉喘息
|
特徴:
|
カラムシ(イラクサ科)は原野に自生するが、畑にも栽培される。夏から秋にかけて開花し、抗原性が強い。
|
抗原:
|
カラムシ花粉(13〜14μ)。秋の空中花粉としてごくわずかに各地で捕集される。
|
症状:
|
眼・鼻アレルギー症状、喘息症状。花粉喘息として1977年、浅井が初めて報告。長崎地方。
|
地域:
|
九州の長崎県に比較的多く、特に丘陵地に多い。
|
備考:
|
ヨーロッパの重要なイラクサ科ヒカゲミズ属(Parietaria)とは共通抗原性は認められなかった。今後アジアの花粉症として注意すべき(三浦)。
|
|

写真提供
:
|
佐世保市立総合病院
浅井 貞宏 先生
|
|
2000年〜2002年、及び2003〜2005年の旬毎花粉捕集状況
下記の各地域(調査施設)名をクリックすると、その地域(調査施設)の2000年〜2002年の旬別花粉飛散状況のグラフが表示されます。