K・Kニュース vol.1(2001年12月号)


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喘息児は増えているか

日本アレルギー協会九州支部 副支部長
(国立療養所南福岡病院長) 西間 三馨
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喘息児は増えているかと問われれば「イエス」。日本は言うに及ばず世界的に増加している。同一地区・同一手法で行われた疫学調査を比較してみると、図1に示すようにいずれも減少している地域はない。

有症率の絶対値だけでみると日本はずいぶんと低値のようであるが喘息の定義の違いがあるので単純に比較はできない。

1995年から始まった世界56ヵ国が参加したISAAC(International Study of Asthma and Allergies in Childhood)第汨且詞アのデータは同一手法で地域も無作為抽出なので信頼性は高いが、その13〜14歳での喘息症状(日本のATS-DLD方式より診断基準はかなり緩い)が相対的比較はできる。図2に示すように、イギリス、ニュージーランド、オーストラリア、アメリカ、カナダなどは日本の2〜3倍の高率であり、日本と同率なのはドイツ、フランス、スウェーデンなどで、いわゆる開発途上国は低率である。なぜ喘息が増加しているのか、その要因は表1のようなことが考えられているが明らかではない。その原因究明のため、第相試験が開始され、今年(2001年)末にも粗データが出る予定である。皮膚テスト、血清IgE値、遺伝子多型、肺機能、気道過敏性、室内アレルゲン濃度調査と、この試験は調査対象を得ることがかなり困難なため、私共は参加を断念したが22ヵ国が参加している。

さらに、今年から第。相試験(第I 相とほぼ同様の試験)がスタートしており、現在、96ヵ国205センターがエントリーしている。この試験は来年末で締められるので、結果は2003年に発表されることになるが、恐らく、1995年に比してさらに高い喘息有症率が出ると予想されている。

我が国は第III相試験には参加しているが、一方で、西日本11県の小学児童(1982年55,388人、1992年45,674人、2002年37,938人予定)の同一地区・同一手法による大規模疫学調査の第3回目が今秋より開始された。この結果は来年夏に公表される予定であるが、極めて注目されている調査である(図3)。

喘息発作のコントロールはGINA(Global Initiative for Asthma)、日本アレルギー学会ガイドライン、日本小児アレルギー学会ガイドラインなどによる非発作時治療の向上により、明らかに昔よりは容易となっている。しかし上記のように喘息の発症までは抑制できず、乳幼児期、さらには胎生期からの治療介入へと治療の方向は進んでいるが、現在のところ、臨床での決定打はない。

アレルギー協会九州支部も石川支部長の御尽力による、社会への啓発行動も含めた積極的展開を画っており、期待すること大である。我々協会役員も頑張らねばと思っている。

表1 気管支喘息の増加の原因

1)

住環境の変化 :

ダニ等の室内アレルゲン増加と接触時間の増加

2)

食生活の変化 :

脂肪酸比 (n3, n6)、早期離乳、食品添加物等

3)

大気汚染 :室内、室外のNOx, SOx, SPM, VOC

4)

感染症の減少 :

Th2優位のホスト側の変化

5)

精神環境の変化

6)

生活リズム :

自律神経系の変化

 


 

研修・情報センター紹介

 

平成13年4月より、国立療養所南福岡病院敷地内に研修・情報センターが設立された。
日本アレルギー協会九州支部が、本センター内に事務所を持つことになった。

財団法人 日本アレルギー協会九州支部

〒811-1394 福岡市南区屋形原4-39-1
国立療養所南福岡病院 情報・研修センター
TEL:092-565-5534(272), FAX:092-566-0194
E-mail: mail@allergy-fk.com

 


 

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