K・Kニュース vol.13(2008年2月号)


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趣  味

日本酒の発祥 〜それは神々の国出雲から〜


国立病院機構福岡病院 副院長  庄司 俊輔

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 それは平成19年○月のKKニュース(Kyushu Kyohkai News)編集会議の席上、次号の構成と筆者がほぼ決まった頃、西間院長から「『趣味』の原稿は誰が書くんだ。もう主だった人間には頼んでしまったな(ちなみに西間院長は「釣り」の題で登場済み)」との言葉、
そして周りをぐるーっと見渡して私に目を止め、「おい、庄司。おまえはよく小田嶋(福岡病院統括診療部長)と飲みに行ってるから酒の話を書け。」(え〜っ、ただ飲んでるだけだから文なんか書けるわけないじゃん)と視線で周りに同情を求めたものの皆無言。「よし、決まりだな。」皆納得の面持ち。そんな〜!

 確かに私は酒飲みです。しかも歴史は長い。小学校入学前から飲んでたと思う。ただし(当たり前ですが)毎日ではありません。唯一正月のみ。そう御神酒(おみき)(お屠蘇)ですね。
しかし、あまりはんぱではなく、小六の頃は確かおちょこに十何杯か飲んだような・・・(やや記憶曖昧ですが)。でも時効ですよね(飲酒運転もしなかったし)。確かにひんしゅくものかもしれませんが、実は今でもいなかの親戚の家では正月に子どもが親の酒を少し飲んでも周囲はあまり目くじらを立てません。これは御神酒の威力のようです。

 さて、御神酒の話が出たので、本題に入ります。これまで述べてきた、わたしの「いなか」、それは出雲の地です。よく「出雲市」と「出雲」が混同されますが、出雲は、島根県を、出雲、石見(いわみ)、隠岐に三分したひとつです(従って私の出身地松江は出雲に入ります)。今でこそ、過疎にあえぐ辺境の地ですが、いにしえには大和朝廷と勢力を二分した強大な朝廷が存在したといわれています。
闘争の末、出雲朝廷は政権を大和朝廷に渡し、大和朝廷はそれと引き替えに、壮大な社(やしろ)を建立し、それが出雲大社(いずもおおやしろ:通称いずもたいしゃ)なのだそうです(写真・右)。

 出雲大社は出雲市の西北の大社町にあり「縁結びの神」で有名ですが、旧暦十月には全国から八百万(やおよろず)の神々が出雲大社に集まり、向こう一年間の縁組みを全て取り決めます。このため出雲地方では十月を神在月(かみありづき)と呼びます。
この長期滞在のために、出雲大社では本殿を囲むように神々のための宿舎が作られていますが、おもしろいことに特に偉い神様は一戸建ての宿舎なのに対し、それほどでもない神様は長屋風の宿舎に雑居です。
神々はここに宿泊されながら神議を重ねられますが、この間ホストである出雲大社の祭神である大国主命(おおくにぬしのみこと)より酒が振る舞われ、現在でもこの時期に出雲大社神官による神事とともに「一夜酒」と呼ばれる酒が仕込まれます。このため大国主命は酒の神としても知られています。

 ちなみに、大国主命の六代前の祖先であるとされる素戔嗚尊(すさのおのみこと)は、高天原より追放された直後にこの出雲の地に降臨し、一夜酒の一種である「八塩折り(やしおり)の酒」を飲ませて、八岐大蛇(やまたのおろち)を眠らせ退治したとされています(「出雲風土記」より)。「八塩折りの酒」は、一度熟成させて作った酒に、醪(もろみ)と粥を加えて熟成(発酵)させる過程を繰り返すことでつくられた糖度もアルコール度も強い酒で、非常に濃厚で旨味のある酒であったようです。
こういう歴史を有するためか、出雲の酒は独特な濃厚さを持ち、言い換えればかなり癖の強いものが多いようです。
かく言う私も、幼児体験のためか、昨今の「吟醸酒」(精米歩合60%以下)のあっさり味はそれほど好きになれず(でも美味しいから飲みますが)、あまり精米せずに「お米の味」のはっきりした(わかりやすくいえば玄米味のような)「純米酒」が一番の好みです。昨今では有り難いことに出雲空港でも「御神酒」を売っており、帰省のついでに買ってきました(写真・左)。先祖に思いを馳せながらいただきたいと思います。

 最後に出雲が日本酒発祥の地であるもう一つの「証拠」があり、それは出雲大社の東方(松江市のやや西方、宍道湖の北岸)にある「佐香神社」の存在です。この神社は出雲風土記に「杵築大社(出雲大社)造営の折、百八十の神がお集まりになり、煮炊きする調理場をたて、酒を造らせられた。そして百八十日酒宴を開いた後去っていかれた。そこでこの地を佐香(さか)と呼ぶようになった。」とあります(「さか」は「さけ(酒)」の古語)。
佐香神社は別名松尾神社とも呼ばれ、酒造りの神「久斯之神(くしのかみ)」を祭り、ここで10月に神事によって作られる御神酒は国税庁認定のその年の新酒第一号となるそうです。

 さておまけの話です。先ほどの素戔嗚尊は、八岐大蛇から救った奇稲田姫(くしなだひめ)と結婚し、松江市の南の郊外に新居を築き、歌を詠みました。
「八雲立つ 出雲八重垣(やえがき)妻籠(ご)みに 八重垣つくる その八重垣を」
これは出雲古事記の冒頭に記されており、日本最古の和歌とされています。そしてこの地には現在おふたりを祭神とする八重垣神社があります。裏手の森の中には奇稲田姫が鏡に使ったとされる「鏡の池」があり、この池にコインを和紙に載せて浮かべ、これが早く沈めば沈むほど良縁が訪れるとされています。
良縁を願う男女は是非とも訪れてみてはいかがでしょうか。

 


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機関誌
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支 部 だ よ り

 「いつまでもデブと思うなよ」(岡田斗司夫著)というダイエット本をご存じでしょうか。「食べたものをそのまま書きとめるだけ」という「レコーディング・ダイエット法」で苦労せずにやせるというもので、現在小生実践中です。
徐々に「ご飯少なめ」「野菜多め」などとバランスを考えて「食べ物」の量を減らすと体重も減る・・・はずなのですが食事の量は減ったのに残念ながらなぜか体重は減りません。原因は「食べ物」は減ったものの「飲み物」が減らなかったためと判明しました。

 恥ずかしながら今号ではその「お米を原料とする飲み物」の話を「趣味」に書かせていただきました。大国主命も「因幡(いなば)の白うさぎ」のころはスリムでしたが「大黒さま」となってからはどう見てもメタボです(私自身は幼少時からの「減感作」のためか肝機能などは正常で幸いにもまだ予備群です)。
「アルコール喘息」は別としても一般的にアレルギー性「炎症」がアルコールで悪化するのも常識ですし、肝庇護薬=抗アレルギー薬とされることが多いのを考えると、やはり酒とアレルギーの間には深い関係があるようです。

 さて、KK newsも第13号となりました。小田嶋先生の「巻頭言」を始め、「キャンプ報告」、「研究報告」、「ローカルニュース」、「学会報告」、「トピックス」、「200字コメント」と、「趣味」以外はとても立派で充実した内容になりました。なかでも原口先生の天璋院篤姫の話は朝ドラ以来ちょっぴり宮崎あおいファンの私にはとても興味深く、また、「研究報告」「トピックス」の学術的なお話も非常にためになりました。
「200字コメント」も毎回楽しみで、古江先生の肩のこらない洒脱な文才などは医者にさえならなければきっと人気作家になったと思わせるものがあります。
KK Newsが他のアレルギー雑誌と一線を画しているのは多才で豪華な執筆陣のおかげと思います。次号もどうぞ楽しみに。

(文責:庄司俊輔)

 

 

 

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「K・K News」Vol.13
2008年2月1日発行

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