K・Kニュース vol.13(2008年2月号)


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アトピー性皮膚炎のかゆみについて

九州大学病院 皮膚科助教 竹内  聡
九州大学大学院医学研究院 皮膚科学教授 古江 増隆
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 アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis:AD)におけるかゆみについて、その特異性と最近のトピックス(ヒスタミン非依存性のかゆみ、ドライスキンとかゆみ、表皮内神経伸長、functional MRI)について以下に簡単にまとめてみた。
いまだ十分に解明されているとは言い難いADのかゆみであるが、本稿が臨床や研究の一助になれば幸いである。

 ADにおいてかゆみと引き続く掻破行動は必発の症状であり、掻破行動により皮膚炎は増悪する。皮膚炎の増悪はさらなるかゆみをもたらし、いわゆる「イッチ・スクラッチの悪循環」を形成する。従ってかゆみと掻破行動の制御は臨床上非常に重要な課題の一つといえる。
しかしながら通常の抗ヒスタミン作用薬が十分に効果的でないなどADのかゆみのコントロールは一筋縄ではいかない。
通常、ヒトは掻き始めこそ気持ちよく感じるものの、ある時点で痛みを感じるようになり掻破行動を終了する1)。しかしAD患者の掻破はすんなりとは止みにくい。AD患者はアセチルコリンの皮内注射2)や物理・電気的な刺激3)など、通常痛みを感じるはずの刺激にかゆみを感じる傾向にある。
つまり「痛み刺激を痛みとして感じにくい」ことによって痛覚を介したかゆみ伝達系の抑制がうまく機能していない可能性があるといえるだろう。

 かゆみは末梢と中枢のかゆみに分けられ4)、かゆみのコントロールとは通常末梢のかゆみのコントロールを意味すると考えてよい。
末梢においては炎症等に伴う様々な刺激により、肥満細胞からはヒスタミン以外にもサブスタンスP、トリプターゼ、ロイコトリエン、プロスタグランジンなどの物質が産生・放出され5)、主にヒスタミンの遊離を促してかゆみ伝達をするとされている。
抗ヒスタミン作用薬抵抗性のADのかゆみに対してはヒスタミン非依存性のかゆみ経路の関与が想定されるが、興味深いことに前述のサブスタンスP6)やトリプターゼ7)は末梢神経上にその受容体を持ち、自身が起痒物質である可能性がある。8,9)また、ブラジキニンやセロトニンなどもヒスタミン非依存性のかゆみを起こすようである10)
一方、オピオイドを介する中枢性かゆみの系では、μ受容体はかゆみ伝達、κ受容体はかゆみ抑制など、受容体の違いによりかゆみ伝達が調整されているが、興味深いことにこれらの役者が末梢でもADのかゆみに関与する可能性が示唆されている。
これまでにAD患者血清中のβ-エンドルフィンの高値や11)、ケラチノサイトや末梢神経細胞上へのμ受容体(注:中枢ではかゆみシグナル伝達を担う)発現12)などが報告されており、これらもヒスタミン非依存性のかゆみを来している可能性がある。

 ADの主症状の一つであるいわゆるドライスキンは老人性乾皮症などのかゆみの主因と考えられており13)、実際にこれらの患者では保湿剤の外用のみでかゆみや軽度の湿疹病変は消失する。ADにおいてもドライスキンがそのかゆみの要因とされているが14)、意外にもこれまで両者の直接的な関連を示した報告はなかった。
そこで我々は、当科で治療中のAD患者に対して、(1)かゆみの程度、(2)アトピー性皮膚炎の重症度、(3)ドライスキンの度合い、の3項目についてスコア化しそれぞれの関連を調べてみた。するとAD患者においてはかゆみの程度はドライスキンの程度よりもむしろ皮膚炎自体の重症度とよりよく相関する傾向にあった。(蜂須賀ら、投稿中)調査対象が比較的重症のAD患者だったためかもしれず、無疹部や軽症患者のドライスキンによるかゆみ誘発を否定するものではないが、少なくとも中等症〜重症のAD患者のかゆみコントロールにおいて、ドライスキンの補正のみでは不十分で皮膚炎の制御が重要であることを示唆し、実際の臨床ともよく一致すると思われる。

 このほか、AD患者にみられる苔癬化病変や痒疹結節などの慢性病変部では肥厚した表皮内に侵入・伸長する知覚神経が見られており15)、執拗なかゆみの一因と考えられている(図1)。

たしかに各種起痒物質の供給細胞であるケラチノサイト16)や表皮内マスト細胞17)と隣接し、かつ解剖学的に皮膚表面に近いことによって、侵入した神経終末はより軽微な刺激でも活性化されやすくなるだろう。同様の現象はADモデルのNC/Ngaマウスでも確認されており18)、ケラチノサイト由来の神経成長因子が関与しているようだ。19)
マウスの慢性皮膚炎モデルを用いた研究では、タクロリムスにより表皮内神経伸長と掻破行動の両方が抑制され、デキサメサゾンではそのどちらも抑制しなかったことからタクロリムスによる掻破行動抑制は表皮内伸長の抑制を介している、と結論づけている20)。しかし、あるシグナル伝達阻害薬を用いた最近の我々の研究では表皮内神経伸長抑制のみでは掻破行動を抑制するには十分でないことを見いだしており(城戸ら、投稿準備中)、更なる検討が必要と思われる。

 最後に新しいかゆみの解析・評価法の可能性について触れたい。
かゆみは感覚(主観)であり客観的な評価が難しい。掻破行動の観察や自己申告制のVAS(visual analogue scale)スケールに頼る他は評価方法に乏しく、かゆみ研究の上で大きな障害の一つとなっている。
最近、functional MRIを用いて様々なかゆみ刺激時の脳活動の変化を解析する試み(図2)が始まっており21)、近い将来ヒトでのかゆみの客観的な評価が可能になる日がくるかもしれない。アトピー性皮膚炎のかゆみの解析も始まっているようなので今後の研究の進展に期待したい。

 文 献

1)

青木敏之、かゆみの気持ちよさ、綜合臨床 2004;53 (5):1658-60.

2)

Vogelsang M, Heyer G, Hornstein OP. Acetylcholine induces different cutaneous sensations in atopic and non-atopic subjects. Acta Derm Venereol. 1995;75:434-6

3)

Ikoma A, Fartasch M, Heyer G, Miyachi Y, Handwerker H, Schmelz M. Painful stimuli evoke itch in patients with chronic pruritus: central sensitization for itch. Neurology. 2004;62:212-7

4)

Yosipovitch G, Greaves MW, Schmelz M. Itch. Lancet. 2003;361(9358):690-4. Review.

5)

Galli SJ, Kalesnikoff J, Grimbaldeston MA, Piliponsky AM, Williams CM, Tsai M. Mast cells as "tunable" effector and immunoregulatory cells: recent advances. Annu Rev Immunol. 2005;23:749-86. Review.

6)

Andoh T, Nagasawa T, Kuraishi Y. Expression of tachykinin NK1 receptor mRNA in dorsal root ganglia of the mouse. Brain Res Mol Brain Res. 1996;35:329-32.

7)

Steinhoff M, Neisius U, Ikoma A, Fartasch M, Heyer G, Skov PS, Luger TA, Schmelz M. Proteinase-activated receptor-2 mediates itch: a novel pathway for pruritus in human skin. J Neurosci. 2003;23(15):6176-80.

8)

Andoh T, Nagasawa T, Satoh M, Kuraishi Y. Substance P induction of itch-associated response mediated by cutaneous NK1 tachykinin receptors in mice. J Pharmacol Exp Ther. 1998;286(3):1140-5.

9)

Shimada SG, Shimada KA, Collins JG. Scratching behavior in mice induced by the proteinase-activated receptor-2 agonist, SLIGRL-NH2.Eur J Pharmacol. 2006;530(3):281-3.

10)

Hosogi M, Schmelz M, Miyachi Y, Ikoma A. Bradykinin is a potent pruritogen in atopic dermatitis: A switch from pain to itch. Pain. 2006;126(1-3):16-23

11)

Glinski W, Brodecka H, Glinska-Ferenz M, Kowalski D. Increased concentration of beta-endorphin in the sera of patients with severe atopic dermatitis. Acta Derm Venereol. 1995;75:9-11

12)

Bigliardi-Qi M, Sumanovski LT, Buchner S, Rufli T, Bigliardi PL. Mu-opiate receptor and Beta-endorphin expression in nerve endings and keratinocytes in human skin. Dermatology. 2004;209:183-9.

13)

Norman RA. Xerosis and pruritus in the elderly: recognition and management. Dermatol Ther. 2003;16:254-9.

14)

Stander S, Steinhoff M. Pathophysiology of pruritus in atopic dermatitis: an overview. Exp Dermatol. 2002;11:12-24.

15)

Sugiura H, Omoto M, Hirota Y, Danno K, Uehara M. Density and fine structure of peripheral nerves in various skin lesions of atopic dermatitis. Arch Dermatol Res. 1997;289(3):125-31.

16)

Andoh T: Importance of epidermal keratinocytes in itch [article in Japanese] Yakugaku Zasshi. 2006;126(6):403-8.

17)

Imayama S, Shibata Y, Hori Y: Epidermal mast cells in atopic dermatitis. Lancet. 1995;346(8989):1559.

18)

Horiuchi Y, Bae S, Katayama I et al: Nerve growth factor (NGF) and epidermal nerve fibers in atopic dermatitis model NC/Nga mice. J Dermatol Sci. 2005;39(1):56-8.

19)

Johansson O, Liang Y, Emtestam L. Increased nerve growth factor- and tyrosine kinase A-like immunoreactivities in prurigo nodularis skin -- an exploration of the cause of neurohyperplasia. Arch Dermatol Res. 2002;293(12):614-9.

20)

Inagaki N, Shiraishi N, Igeta K, Itoh T, Chikumoto T, Nagao M, Kim JF, Nagai H. Inhibition of scratching behavior associated with allergic dermatitis in mice by tacrolimus, but not by dexamethasone. Eur J Pharmacol. 2006 Sep 28;546(1-3):189-96.

21)

Leknes SG, Bantick S, Willis CM, Wilkinson JD, Wise RG, Tracey I. Itch and motivation to scratch: an investigation of the central and peripheral correlates of allergen- and histamine-induced itch in humans. J Neurophysiol. 2007;97(1):415-22.


乳幼児アトピー性皮膚炎におけるプロ(プレ)バイオティクス


国立病院機構福岡病院 小児科部長 柴田 瑠美子
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 乳幼児のアトピー性皮膚炎では新生児からの腸内フローラ構成において健康児に比べビフィズス菌が少ない傾向にあることが報告され、乳酸菌投与による腸内環境の是正と臨床効果を目的とした"プロバイオティクス"が現在まで検討されている。
1997年アトピー性皮膚炎児への乳酸桿菌、プラセボ比較により、乳酸菌による便中炎症性マーカーの減少と腸透過性改善、皮疹の改善効果が認められている。これらの乳酸菌投与によるアトピー性皮膚炎児への効果はIgE型食物アレルギー合併例、とくに血中IgE高値群で有用であるとされている。
乳幼児のミルクアレルギーにおいては、IFNγ産生が低下しており、乳酸菌投与によりIFNγ産生、便中sIgAの増加、TNFαの低下、αアンチトリプシンの低下がみられ、乳酸菌がアトピー児の腸内アレルギー炎症を鎮める作用があることを指摘している。
最近の検討では乳幼児アトピー性皮膚炎で食物アレルギーを合併した症例で、よりプロバイオティクス効果があることが報告されている(表1)。

 アトピーリスク家系における妊娠中からの授乳中の母親へのプロバイオティクスでは、プラセボ群より2歳までのアトピー性皮膚炎発症が優位に低く、母乳中のTGFβの増加が認められ、4歳まで皮疹が優位に少なかったことから発症予防効果があるとされた。
最近の検討ではL reuteri投与(母親と児)により2歳までの湿疹発症はIgE関与のアトピー性皮膚炎のみ対象より低下しており、アレルゲン感作率は母親にアレルギーを有する場合に低かったことが報告されている。
一方、母親へのL acidophilus投与では生後6〜12ヵ月の発症予防効果がなく、アレルゲン感作も逆に増加していたとする論文もある(表2)。投与する乳酸菌の差異や対象がアトピー型非アトピー型により異なる結果がでている。

 このような中、オリゴ糖による乳幼児アトピー性皮膚炎におけるプレバイティクスの試みが行われるようになった。プレバイオでは腸内にもともと棲息している内在性のビフィズス菌増強効果のあるオリゴ糖が使用されている。母乳ではオリゴ糖が12g/L(初乳では20g/l)と乳糖、乳脂肪に次いで多く含まれておりオリゴ糖が乳児の健全な腸内環境の維持に重要な役割を果たしている事が示唆されていた。
最近、アトピーリスク児にガラクトオリゴ糖/フルクトオリゴ糖混合物を生後より6ヵ月内服投与させ、優位のアトピー性皮膚炎発症率の低下を報告している(Moro G Arch Dis Child 2006;91:814-819)。乳児の便中sIgAの増加も乳酸菌投与より早いことも報告されている(表2)。

 現在使用されているオリゴ糖は混合物であるが、精製オリゴ糖ケストースglucose-fructose-fructose(ホクレン)は、ラフノースよりもビフィズス菌増殖作用が強くフラクトオリゴ糖で増加してくるクロストリジュームも減少させることがわかった(竹田博幸 アレルギーの臨床2007;27:136-140)。
著者は、東海大学古賀教授との共同研究で、食物アレルギーを有する乳幼児アトピー性皮膚炎では皮疹の重症例ほど便中ビフィズス菌が減少しており、これらの症例にケストースを3ヵ月内服させることにより、便中ビフィズス菌の優位な増加と皮疹の軽減を確認している。このビフィズス菌種では、古賀教授によりBifidobacterium catalatumが特に増加していることが確認されている(アレルギー 2007;56:1184)。
現在、同様に食物アレルギーを有する乳幼児アトピー性皮膚炎で二重盲検法によるケストースのプレバイオ効果の検討を行っている。

 健常小児では2歳までにTh2優位からTh1優位へシフトするが、アトピー児ではTh2優位が続くことが報告されており、Th1免疫機能の活性化に影響する腸内細菌を含めた細菌等の刺激が少ない環境がアトピー発症に関与している"hygiene hypothesis"の可能性が指摘されている。
アトピー発症や慢性化を防ぐ上で生後からのビフィズス菌優位の腸内環境の維持は重要な役割を担っていると思われる。



ブエノスアイレス

国際皮膚科会議がアルゼンチンのブエノスアイレスにて開催された。ケチャップやペンキを背中にかけ、それを親切に拭いてくれるような素振りで財布を掏るという手口のスリが横行していた。多くの知人が被害にあった。
牛肉が安くておいしかった。放牧の牛なので脂身は少なく柔らかく旨みがあった。日常品の物価はきわめて安い。
ガソリン代は日本の1/4で、タクシー代は1/5くらい、地下鉄は1乗車あたり0.7ペソ(1ペソ30円位)と格安である。タクシー代を払おうと20ペソ札を出したら拒否された。言葉が通じないので、理由が分からず閉口したが、photocopyの偽札が横行していることが後でわかった。日にかざしてみると、確かに透かしがなく偽札だった。
昼食は英語が通じず注文に苦慮したので、カプチーノとメディア・ルーナかパンチョスを食べた。メディア・ルーナは「半分の月」という意味でクロワッサンのことである。パンチョスはホットドックのことで、炙ったソーセージではなく、ゆがいたソーセージがはさんである。両方とも本当においしかった。
パンチョス2個とコーラで3ペソ、カプチーノは2ペソ、メディア・ルーナは1ペソが相場であった。

(九州大学大学院医学研究院 皮膚科学教授 古江増隆)

基本こそ重要

特異的lgE抗体の測定が行えるようになり、アレルギー性鼻炎の診断が容易になってきた。しかし、時々、この検査だけでアレルギーと診断され、あまり症状も無いのに長年投薬を受けている患者さんを診ることがある。
検査の感度が高くなってきたこともあり、現在スギ花粉症の感作率は75%といわれ、感作されていない健常人のほうがむしろ異常ではないかと言われる時代である。発症の有無をきちんと問診するという基本がいかに重要であるかをあらためて感じている。

(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 聴覚頭頸部疾患学教授 黒野祐一)

アイデアを武器に活躍する時代を期待

9月になっても残暑厳しく、10月になってようやく朝夕の気温が下がり始めた。そして発作で入院する患者が増加した。今年の秋は発作の当たり年でないかと思う。春と秋の喘息の増悪はライノウイルス感染が関係しているとのコンセンサスが形成されつつある。授業では、"夏に増えたダニが秋に死んで抗原量が増えるため"と習った気がする。
知識を詰め込むことは容易だが、知識にとらわれてしまいがちである。固定観念から思考を解き放ち、新しいアイデアを発想することはつくづく難しいと感じる。我が国の医学教育も知識を詰め込む教育から自己学習中心に変化しつつある。多くの若い世代の日本の医師・医学者が世界の第一線でアイデアを武器に活躍する時代を期待したい。

(佐賀大学異学部 小児科教授 濱崎雄平)

猛暑と喘息発作再来

四十年振りに喘息発作が起こったと、恰幅のよい中年紳士が訪れて来た。まだ小学生だった彼を小児喘息病棟で一年余の長期入院に預かっていた懐かしい記憶が甦って私を懐かしがらせてくれた。
このK君は大学を出て事業を起こして成功し今は会社の重鎮だが仕事が超多忙でまだ独身だと言う。家は木造平屋で書間も雨戸は閉めきり、小型の空気清浄器はあるが換気は悪いそうで、近年稀な猛暑と高湿にダニ類が今年は猛繁殖した結果とお互いに納得した。

(九州中央リハビリテーション学院 学院長 岡崎禮冶)

気象予報治療 

今夏は、異常に暑い日が多く、長く続いた。しかし、日本列島は、北から南へ、山岳から里村へと遅ればせながら紅葉前線は進んでいる。昼夜の温度差が大きいのが幸いしているのだ。
しかし一方では、それに呼応して、冷気によるくしゃみや水生鼻漏など鼻過敏症状に悩まされる人々が少なくない。このような例での治療は、予防治療や初期治療の範疇には入らず、天気図と朝夕の気温を睨めっこしながら投与の機会を窺うので気象予報治療とでもいえるだろうか。

(うえの耳鼻咽喉科クリニック 大山 勝)

New Zealandのエニシダ事情と交通標識

最近New Zealandに旅をしました。日本は12月始めでも、ここでは春でした。南島も北島にも外来のエニシダが綺麗な黄金の花をいっぱいつけて繁茂していました。日本では苗を売っているというのに、あまりに激しく、所によっては丘全部がエニシダで埋まるほどになり、国はその駆除に頭を悩ませているそうです。いくら人口が少ないとは云え、エニシダ花粉症が発症しているそうです。
New Zealandの交通標識に「Give Way」というのが交差点に立てられています。それは日本の「止まれ」と同じ逆三角で赤線で縁取られています。
Give weyは譲り合って走りましょう、という意味ですが、日本では「一時停止」で頭から規制をかけています。日本人がいくら過密な人口の中にあるからと云っても、乏しい心のゆとりを見せ付けられ、それは失いつつある「思いやり」にも通ずる表現だと感じ取りました。

(熊本大学名誉教授 石川 哮)


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