K・Kニュース vol.3(2002年12月号)


〜Page2〜

第52回 日本アレルギー学会 総会

〜平成14年11月28・29・30日、パシフィコ横浜〜

 平成14年11月28日、29日、30日の三日間、第52回日本アレルギー学会総会が、昭和大学医学部第一内科教授足立 満会長の主催にて、横浜市みなとみらいにあるパシフィコ横浜で開催された。
学会のテーマは「アレルギー疾患の病因と治療〜基礎研究の進歩とその臨床応用はどこまで進んだか〜」で、招待講演10、特別講演4、教育講演15、シンポジウム15、イブニングシンポジウム10、教育セミナー23、一般演題543題(全て口演)と機器展示が12の会場にわたって終日繰り広げられ、さらに宮本昭正、中島重徳、三河春樹の三先生を司会とする「喘息治療ガイドライン」に関する特別企画シンポジウムや市民公開講座も行われた。

 特筆すべきは外国からの多数の招待者たちで、Capron夫妻、Barnes、Nadel、Holgate、O'Byrneら著名な招待講演者の先生たちのみならず、最近、細気管支病変で注目を集めるWenzel先生などシンポジウムを中心に講演された先生も加えると総勢12人にのぼり、まさに国際色豊かな豪華な学会となった。600を越える演題内容は基礎から臨床まで非常に多岐にわたり、遺伝子など最近のテーマも多かったが、筆者には、喘息のみならず、耳鼻科および皮膚科領域においても「リモデリング」がトピックになってきているのが感慨深かった。
また、アレルギー学会に関連する話題として、学会理事の定年制に伴い、石川理事長をはじめ、20世紀を代表する著名な先生方が多数第一線から退かれた。これらの先生方の名を恥ずかしめぬよう学会を発展させていくことが、あとに続く者たちの責務と考える。

(庄司俊輔:国立療養所南福岡病院 記)


 

第1回 九州国際アレルギーシンポジウム

〜平成14年10月20日、福岡ソフトリサーチパーク内ももちキューブ〜

 平成14年10月20日、第1回九州国際アレルギーシンポジウムが西間三馨大会長のもと、福岡ソフトリサーチパーク内ももちキューブで開催された。
 このシンポジウムでは、アレルギー疾患において3つの観点を取り上げ、それぞれのテーマについて第一線でご活躍の研究者に迫って頂いた。
 テーマ1.「アレルギー疾患の成因」では、Julian M Hopkin教授(ウェールズ大学スワンジー校)が環境要因としての抗生物質による消化管細菌叢の変化あるいは寄生虫防御とアレルギー疾患との関連について、白川太郎教授(京都大学)が遺伝要因としてのアレルギー疾患に関連する一塩基多型(SNP)の全ゲノム解析の現状について話された。
 テーマ2.「モデルマウスからのレッスン」では、Marsha Wills-Karp教授(シンシナティ小児病院医療センター)がサイトカインであるIL-13による気管支喘息発症の分子メカニズムについて、永井博弌教授(岐阜薬科大学)がサイトカインやエイコサノイドの気管支喘息における役割について話された。テーマ3.「アレルギー疾患の病態形成」では、Riccardo Polosa教授(カターニャ大学)がアレルゲンとして働くディーゼル粒子による気管支炎症発症の機序について、大田健教授(帝京大学)が気管支喘息の気道リモデリングにおけるTGF-β, IGF-1などの関与について話された。

 近い分野の研究者同士が議論されたこと、研究レベルの高い日本の研究者が講演されたことから、非常に刺激的なシンポジウムであったと思われ、今後もこのようなシンポジウムが九州で開催されることを願っている。

(出原賢治:佐賀医科大学分子医化学 記)


 

予告 と ご案内

学 会 ・ 研 究 会 予 告

 

講 習 会 の ご 案 内

第13回、国際喘息学会日本北アジア部会

会 長

西間三馨 国立療養所南福岡病院院長

会 期

2003年2月28−3月1日

場 所

アクロス福岡 国際会議場

問合せ先

国立療養所南福岡病院
Tel:092−565−5534 Fax:092−566−5702


第54回、日本東洋医学学術総会

会 長

原 敬二郎 恵光会原病院院長

会 期

2003年5月16−18日

場 所

アクロス福岡

問合せ先

医療法人心和堂後藤クリニック
Tel:092−712−0367 Fax:092−712−9191


第2回、アレルギー・臨床免疫医を目指す人達の為の研修会

主 催

日本アレルギー協会九州支部

会 期

2003年3月8−9日

場 所

八重洲博多ビル 11Fホール

問合せ先

日本アレルギー協会九州支部
Tel:092−565−5534(内272)
Fax:092−566−0194

第9回、アレルギー週間一般向け講演会(福岡市)

主 催

日本アレルギー協会九州支部

会 期

2003年2月9日

場 所

天神ビル本館 11F会議室

問合せ先

日本アレルギー協会九州支部
Tel:092−565−5534(内272)
Fax:092−566−0194


第9回、アレルギー週間一般向け講演会(北九州市)

主 催

日本アレルギー協会九州支部

会 期

2003年2月23日

場 所

北九州市総合保健福祉センターアシスト21

問合せ先

日本アレルギー協会九州支部
Tel:092−565−5534(内272)
Fax:092−566−0194


The
News!

(文責:石川 哮)

ア レ ル ゲ ン エ キ ス 騒 動 !!

その1
 わが国の治療・診断用アレルゲンエキスの供給は国内では鳥居薬品株式会社が一手に製造と販売を行っていて、輸入は保険適応ではないし、一般診療としては使いづらい。販売アレルゲンの中には会社としては製造販売を停止したい不採算品目が多い。社会的責任がなければアレルゲン製造を全面的に止める意見もあったと聞く。
 日本アレルギー学会ではアレルゲンエキスの診断・治療への重要性を考え、厚生労働省に「アレルゲンエキスの継続的安定供給に関する要望書」を提出し、(1)アレルゲン製造に対する薬価基準の再検討、(2)輸入アレルゲン使用に関わる診療内容に対する医療保険扱いについての検討、を昨年12月に願い出た。輸入アレルゲンの保険適用は認められなかったが、厚労省の理解により、
表1のように平成14年4月から薬価の改訂がされた。

その2
 ところが、KKNews 2号に書いたように、医原的ウイルス感染事件の影響を受けて、動物由来のアレルゲンエキスのウイルス除去操作による安全性確保が要求され、鳥居薬品株式会社は、出来上がった製品の熱処理、酸処理などはアレルゲン活性の変性が起こりうるし、チェックシステムを動かす費用の問題もあって、製造中止も止むを得ないと結論し、平成14年2月に日本アレルギー学会に報告した。それも3月いっぱいで製造を停止とのことで、学会も手の打ちようがなく、結局製造中止となった。
 しかし、牛乳、鶏卵など主要食物アレルゲンやネコ、犬などのペットアレルゲンもリストに載せられたため、診療第一線での混乱が予想されたため、再度「アレルゲンエキスの継続的安定供給に関する要望書」を厚労省に提出し、アレルギー学会、小児アレルギー学会、食物アレルギー研究会の代表、鳥居薬品株式会社と厚労省が一堂に集まって対策を検討した。その結果、平成14年11月に下記動物由来スクラッチ用診断エキス6品目(
表2)の製造・供給が可能になった。それは、製品由来動物および製造過程における安全性を確保し、なお、医師からのインフォームドコンセントにより、「ウイルス感染症の伝播等の危険性を完全には排除できない」ことを患者に説明することが条件とされた。

 

表1.アレルゲン薬価新旧比較
品   名
単 位
旧薬価(円)  新薬価(円)

診断用
アレルゲンスクラッチエキス

1瓶
1,824 ─→ 2,087

診断・治療用
アレルゲンハウスダストエキス

1瓶
1,693 ─→ 1,992

診断用
アレルゲンスクラッチエキス

1瓶
1,693 ─→ 1,992

アレルゲン治療エキス

1瓶
1,693 ─→ 1,942

標準化アレルゲン
治療エキス スギ花粉

1瓶
1,693 ─→ 1,942

 

表2.製造復活診断用アレルゲンスクラッチエキス

 ・ アレルゲンスクラッチエキス 「トリイ」  犬    毛

 ・ アレルゲンスクラッチエキス 「トリイ」  兎    毛

 ・ アレルゲンスクラッチエキス 「トリイ」  猫    毛

 ・ アレルゲンスクラッチエキス 「トリイ」  牛    乳

 ・ アレルゲンスクラッチエキス 「トリイ」  卵    黄

 ・ アレルゲンスクラッチエキス 「トリイ」  卵    白

 

アストレメヂン1号、2号の製造・販売中止
 日本臓器製薬株式会社で製造・販売されていたアストレメヂン1号、2号は、生物製剤として安全性が確保できず、昭和24年来の長期使用にピリオドを打つことになった。


前ページへ

 

 

次ページへ