K・Kニュース vol.1(2001年12月号)


〜Page3〜

九州のスギ・ヒノキ科花粉と福岡県の花粉症

〜スギ花粉症、イネ科花粉症〜

国立療養所南福岡病院アレルギー科 岸川 禮子
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 平成13年2月1日〜4月30日まで福岡県医師会を中心とした九州各県医師会(沖縄県を除く)と医療機関、国公立医療機関およびアレルギー協会九州支部の協力・連携でスギ・ヒノキ科花粉を重力法で測定した。2月15日〜4月15日まで日曜を除く毎日、福岡県内花粉情報を行った。花粉症患者状況は県内耳鼻科、眼科医院より受診数・コメントなどの情報を提供していただき、気象条件は日本気象協会福岡本部から予報をいただいて作成した。

 スギ花粉飛散開始は2月中旬頃で昨年より約1週間遅かった。飛散ピークは2月下旬から3月上旬にかけて見られたが10日頃気温が低下し、捕集数は一時激減した。再び気温が上昇するにつれて増加し、4月上旬まで捕集された。九州全域で捕集数は1,220〜27,740個/cuの地域差はあったが、飛散パターンはほぼ同じ状況を示した。大分県東国東郡が最も多く、大分、宮崎、長崎、福岡では昨年の10倍以上の地域が多かった。
 ヒノキ科は3月半ばころから開始した。3月下旬と4月下旬に2峰性飛散ピークを形成し、下旬頃まで長期に捕集された。宮崎、鹿児島の40〜440個/cuを除き、大量に飛散した。福岡県では昨年に続いてスギよりヒノキ科が多く、1995年以来の大量飛散年であり、昨年の平均約10倍の抗原花粉捕集数であった。

 花粉情報中の患者受診数は耳鼻科約10,200名/10件、眼科約700名/4件で、昨年の約2倍であった。飛散開始初期は100名/週の受診数がピーク時は約1,300〜1,500名/週に増加し、昨年の約2倍の受診数を示した。中等症が多く、今年初発の患者も多かったとのコメントであった。
 耳鼻科受診数と眼科受診数は非常によく一致しており今年も非常に有意な正の相関が得られた。スギ花粉飛散終了後、ヒノキ科の急増で再悪化した患者が多く、4月中旬まで続いた。5月に入って福岡市内2耳鼻科施設の協力をいただき、イネ科花粉症患者の受診状況について観察した。イネ科は5月上旬から中旬にかけてピークを示し、患者は遅れて受診する傾向であった。スギ花粉症に比べると花粉が非常に少ないこともあり、飛散花粉と受診数が必ずしも一致していない。6月に入って内科にも患者は受診しており、患者も医師もイネ科花粉症に気づいていない例もみられた。 

 


 

大気アレルゲン感作の低年齢化調査

〜吸入性抗原感作とアレルギー発症の低年齢化調査〜

国立療養所南福岡病院小児科 柴田 瑠美子
NTT西日本九州病院アレルギー科 吉原 明子
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 近年、ダニ、ペット由来抗原、花粉などの吸入性アレルゲンによる喘息や鼻アレルギーなどの発症が0〜2歳でもみられる、いわゆる低年齢化の現象が報告されるようになった。
 九州における実情を探る為、平成12年〜13年にかけて福岡東保健所では1歳半と3歳児健診(324名)、熊本東部保健センターにおいては1歳半健診(329名)の機会にアンケート調査を行った。感作率を見るため血清抗体を国立療養所南福岡病院小児科診療を通じて調査した(100名)。

(1)1歳半の健診でアレルギー疾患のある児の数は福岡・熊本共に約20%、3歳児健診では福岡で26%であった。

(2)鼻アレルギー、花粉症、眼の症状は熊本で30%弱、福岡で3%と極めて差のある結果になった。理由は不明である。

(3)アンケートによる吸入性抗原陽性は表1に、病院を訪れた患児の花粉に対するIgE抗体陽性者は表2に示した。

 

図1

図2

表1.抗原検査を受けていた児の各抗原陽性頻度(%)

 

福 岡
熊 本
1歳半(29名)
3歳(74名)
1歳半(68名)
室内塵

6.9

17.6

23.5

ダ ニ

24.1

16.2

10.0

花 粉

2.9

ネ コ

1.4

イ ヌ

3.4

1.4

カ ビ

2.7

 

表2アトピー性皮膚炎児における花粉特異IgE抗体陽性率

花粉に対するIgE抗体陽性者

年齢
例数
ブタクサ
スギ
オオアワガエリ
1歳

11

2歳

14

2(14%)

1( 7%)

2(14%)

3歳

27

7(26%)

6(22%)

6(22%)

4歳

28

12(43%)

17(60%)

13(46%)

5歳

20

9(45%)

13(65%)

12(60%)

合計

100

30(30%)

37(37%)

33(33%)

 

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