K・Kニュース vol.12(2007年8月号)
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「小児気管支喘息治療・管理ハンドブック2007」について
日本アレルギー協会九州支部長
(NHO福岡病院院長) 西間 三馨
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今年春の日本小児科学会総会初日に合わせて、さる4月19日、日本小児アレルギー学会ガイドライン委員会編による上記ハンドブックが発刊された。
本書は今までのガイドライン(JPGL2005)をコンパクトにしたもので、その目的とするものは、日本小児アレルギー学会ガイドライン委員会では、小児気管支喘息の診断・治療・管理の向上のため、2000年春に「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2000(JPGL2000)」を発刊し、2002年(JPGL2002)、2005年(JPGL2005)と新たな知見を入れて改訂を重ねてきた。
小児気管支喘息患者を診療している多くの医師が本ガイドラインを参考にし、それに沿って診断・治療・管理をするようになったが、専門医不在、小児科医不在のところでは、その普及はいまだ不十分である。また、最近の卒後研修制度の変更により、小児の喘息発作を経験し、その正確な知識を得る機会と指導者に恵まれないことがあることも危惧されている。そこで日本小児アレルギー学会では、より実戦的かつ論理的・簡潔なハンドブックを、JPGL2005を基にして作成することとした。本書が卒後臨床研修中の若手医師はもとより、医学生や小児アレルギー非専門医の方々にも有用な座右の書となることを期待しているとなっている。 項目は、
第1章:
小児気管支喘息の定義、病態生理、鑑別疾患、増悪因子
第2章:
外来での急性発作対応マニュアル
第3章:
病棟での急性発作対応マニュアル
第4章:
喘息発作時の合併症
第5章:
急性発作における薬物療法
第6章:
外来での長期管理方法の基本
第7章:
外来での長期管理(上級者編)
第8章:
長期管理に関する薬物療法
第9章:
吸入デバイスとその使い方
第10章:
日常管理
第11章:
喘息の疫学
第12章:
気管支喘息の合併症
第13章:
ワンポイントレッスン
第14章:
活用できる主な喘息支援団体と参考資料
第15章:
主な喘息薬一覧
となっている。とくに初級者、専門外の医師には格好の小児喘息ガイドブックと言えよう。
「はなこさん」が九州にやってきた
国立病院機構福岡病院 アレルギー科医長 岸川 禮子
---------------------------------<リアルタイム花粉モニターの設置>
環境省は花粉症患者の症状緩和の目的で、平成14年度から都市部と山間部に花粉自動測定器を設置し、花粉観測予測システム検討委員会(遠藤朝彦、岡本美孝、佐橋紀男、篠原健司、高橋祐一、新田裕史各氏からなる)を置いて花粉の飛散状況をリアルタイムで観測するシステムを構築してきている。
平成18年度までに関東地区を皮切りに、近畿、中部、中国・四国へと花粉測定地区を拡大して各地区約20地点に設けられ実際に稼動している。今後さらに設置場所を増やす予定がある。平成19年度は九州地区でも測定ができるようになった。九州では約20年前から各県医師会の協同研究として約50箇所で重力法によるスギ、ヒノキ科空中花粉を測定して花粉情報活動を行っている。その中で九州各県の県庁所在地で調査している施設を中心に平成19年リアルタイムモニターKH3000が設置された(図1)。
重力法のダーラムの花粉捕集器が設置されており、調査結果をそれぞれ比較できる地区が選定された。平成19年の4月1日から公開され始めたが、まだ十分な広報がなされていないため知らない人々が多い。またスギ花粉が終了していたので利用価値も低かった可能性があった。
平成20年は飛散季節前から稼動するのでスギ花粉の飛散初期から花粉症の初期治療に役立てることができるであろう。
図2は「はなこさん」のホームページである。時間毎の粒子数が経時的にグラフで表示され、地図上に風向も表示されている。
来年は東北地方にも設置されいよいよ全国的に稼動し始める。
<リアルタイム花粉モニターKH3000>
パーテイクルカウンターで、現在よく使用されているレーザー光学手法を用いた方法が応用されている。
花粉の形態はほぼ球形なので、散乱光を側方と前方から受光し、さらに散乱時間も検知して3次元的に測定して球形に近い粒子だけを計数するしくみになっている。粒径レンジはスギ・ヒノキを計数するために28?35μmの粒子のみ計数するよう作製されている。体積法で大気吸引抗口は垂直に向いて風向に左右されないよう工夫されている。吸引口には砂抜き容器に直結して砂は比重差で落ち、花粉を含んだ大気は光学系に入り、半導体レーザー光に照射され検知される。大気吸引量は毎分4.1L(4時間で1立方m)である。従来のダーラムの花粉捕集器による花粉数とよく相関することが報告されている。
しかし、冬場の雪や春先からの黄砂現象により捕集数が影響を受ける。雪は粒径分布の違いにより補正を行う方式を検証中である。黄砂については黄砂レンジをつけて対応しているが、十分ではなく、さらなる検討が必要である。又、花粉鑑別も困難であり、スギ、ヒノキ科のみの飛散時期にはよいが4月に入り、イネ科、ブナ科などの花粉が混じてくると特異性に欠ける。
まだまだ、課題が残されている.
(佐橋紀男、藤田敏男:環境技術32(3):191-195、2003参考)
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総額121億円の意味の研究 松坂大輔が、移籍料で60億円、6年契約で61億円の桁外れの高額にてレッドソックスに移籍して活躍している。スポーツ番組で、松坂は、日米のボールの違いやその克服法について詳細に説明していた。プロならば企業秘密としてしゃべらないはずだが、自分の投球術は真似ができるものではないという自信があるのだろう。松坂の投球は、バッターボックスに立つと消えるボールに近いのではないだろうか。今後、明るいが厳しく創造力のある天才投手松坂の投球とコメントに注目しながら総額121億円の意味を研究したい。 (熊本大学大学院医学薬学研究部 呼吸器病態学分野教授 興梠博次) 医師国家試験の結果に思う問題点 医師国家試験の大学別合格率が発表された。我が鹿児島大学は国立大学最下位。全体でも下から6番目。開校以来最低の成績である。昨年度の成績が悪かったため、その対策としてグループ学習を強化し、卒業試験問題の改訂を行った。集団心理の落とし穴、卒業試験をパスしたことの安心感、その方法論の正否は別として、学生が教官の意向に反した方向に進み、これが災いしたことは否めない。卒後臨床研修制度にも似た問題点を感じている。 (鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 聴覚頭頸部疾患学教授 黒野祐一) 喘息病棟閉棟式 上天草総合病院の小児喘息病棟(70床)が今年の3月に寂しい閉棟式を行い1965年以来の長期入院療法の幕を閉じた。温水プールや家族宿泊室、心理検査室などの設備と、生活指導員、ケースワーカー、臨床心理士など特殊技能者を擁し、熱気溢れる理想の治療場が消失して残念でならない。アレルギー学や心理療法の進歩の故にする関係者もいるが、要は若い力を結集していた集団力が、加齢に伴い知力も体力も劣化して、緻密なチーム・ワークが出来なくなったからである。職員の半数が定年で去り私も傘寿の祝いをして貰う歳になっている。 (九州中央リハビリテーション学院院長 岡崎禮冶) 軟膏チューブ 日常診療におけるステロイド軟膏の使用量を調査しているときに、2人のヨーロッパとアメリカの皮膚科医に日本の軟膏チューブをたまたま見せたことがある。一人は日本の5gチューブは鼻だけに塗る軟膏かといい、一人はネズミの実験用かと言った。あまりに小さいからである。欧米では軟膏チューブは100g、50gチューブが主体であるのでさもあらん。当然、欧米の1人あたりの外用量は日本の3倍?4倍である。 (九州大学大学院医学研究院 医学部皮膚科教授 古江増隆) 島のタラソテラピー 喘息やアトピー患児に対する水泳や海棲生物と親しむ試みは一定の成果があがっている。ここ数年、奄美地域では、与論島、沖永良部島に次いで名瀬にもタラソテラピー施設がオープンし、好評を博している。この地では、沖合いで作られた肌を撫でる潮風、青い海で生まれた白い波飛沫と潮騒の音、珊瑚礁、海藻などの磯の香など自然の恵みが一杯である。人々の五感を心地よく刺激し、アレルギー、膠原病患者には魅力的な朗報である。 (鹿児島大学名誉教授 大山 勝) |