K・Kニュース vol.13(2008年2月号)


〜Page4〜

第57回日本アレルギー学会総会

平成19年11月1日、2日、3日の3日間、第57回日本アレルギー学会総会が、横浜市立大学大学院 環境免疫病態皮膚科学教授 池澤善郎先生の主宰にて、パシフィコ横浜会議センターおよび横浜グランドインターコンチネンタルホテルにて開催された。

「現代のニーズに応えるアレルギー学会、社会に開かれたアレルギー学会、本学会の国際化」を学会のメインテーマとして、特別講演5,招請講演4、教育講演12、シンポジウム15、イブニングシンポジウム11、教育セミナー13、一般演題459題(全て口演)が全会場にわたり活発に繰り広げられた。また、最終日には市民公開講座が開催された。

今回も多数の著明な先生方が海外から参加されたが、特筆すべきは、学会前日に行われた「アレルギー疾患のニューアプローチ」を総合テーマとした二部形式のプレコングレスシンポジウム、および、「アトピー疾患と気管支喘息における環境汚染の影響」がテーマのシンポジウム8の二つのシンポジウムで、これらは全て英語での講演と質疑応答が海外の先生を交えて積極的に行われた。アレルギー学会の国際学会としての方向性を示すものといえる。

特筆すべきこととして、学会初日に、この学会にあわせる形で「アレルギー疾患・治療ガイドライン2007」が発刊され、会場にて頒布された。同日午後には日本アレルギー学会理事長である西間三馨国立病院機構福岡病院長より、この本の作成された経緯が紹介された。
これによれば、このガイドラインは、それまで専門別に個々に作られていた「成人喘息」「小児喘息」「アレルギー性鼻炎」「アレルギー性結膜疾患」「アトピー性皮膚炎」「食物アレルギー」の最新版を一冊にまとめたものであり、アレルギーの分野での画期的な出版物である。今後アレルギー専門医を目指す医療人のバイブルとなっていくと期待される。

アレルギー学会参加者は年々増加しており、どこの会場でも活発な討議が行われていた。アレルギーが国民病としての重要性を増す中、アレルギー学会および学術集会の存在意義もさらに高くなっていくものと期待される。

 (国立病院機構福岡病院副院長 庄司 俊輔)


第40回日本小児呼吸器疾患学会

この学会は、平成19年11月17日から2日間、住友病院小児科部長の井上壽茂会長が主宰され、大阪国際交流センターで開催された。

招待講演として中国からJian-Guo Hong先生が中国での「喘息急性発作の治療」、特別講演は第26回会長もされた豊島協一郎先生が「小児呼吸器疾患とこころ」と題して行われた。これまでの長年にわたる小児の呼吸器疾患診療を通して、心身医学の立場から大変示唆に富む講演でした。

教育講演は、新田裕史先生による「大気汚染と小児呼吸器疾患」、土田 尚先生による「小児の薬物療法が抱える問題点」が行われました。

シンポジウム1は黒崎知道先生と私の司会で「小児呼吸器感染症の病原体診断はどこまで可能か?必要か?」、シンポジウム2は小児の吸入療法の有用性を紹介し、普及させる目的で「小児の吸入療法」が行われました。

今回は、第18回日本小児呼吸器外科研究会と同時開催され、合同ワークショップ「嚢胞性肺疾患の手術適応と手術時期」、実践セミナーとして「気道ファイバースコピーにトライしてみませんか」は、いずれも大変好評でした。
一般演題は79題と多く報告され、宿題報告4題、ランチョンセミナー4題も企画され、充実した学会でした。 

(国立病院機構福岡病院小児科医長 岡田 賢司)


第77回日本感染症学会西日本地方会学術集会

上記学会を平成19年11月15,16の両日、佐賀市ホテルニューオータニで開催した。本学会は中国、四国、九州、沖縄をカバーする地方会で、「77回」が示すように、古い歴史と伝統を有している。
2日間で約330名の参加者の下、84題の一般演題の発表といくつかの企画を催した。

特別講演として、熊大血液内科の満屋裕明教授による「HIV感染症の現況と新しい治療戦略」を、そして招請講演として九大ウイルス学の柳雄介教授に「麻疹ウイルス感染−受容体の構造解析と動物モデルに基づく新しい理解」の講演をお願いした。
満屋教授は今でも日米を股にかけて研究を展開されるAIDS治療研究の第一人者であり、若くして本年度の紫綬褒章の栄に浴された。また、柳教授は麻疹ウイルス受容体に関する一連の研究で、昨年の野口英世記念賞を受賞された。
このような世界トップのお2人の講演は聴衆を大いに魅了した。

 シンポジウムでは現在問題になっている「Compromised hostにおける感染症」を取り上げ、それぞれ専門の5人の演者に発表いただいた。また、教育セミナーのセッションを設け、「知っておくべき感染症」として、「Vibrio vulnificus 感染症」、「レプトスピラ病」、及び「デング熱」の3題のエッセンスの講演をお願いし、いずれも好評であった。
さらに新しい試みとして「感染症outbreakに対する九州・山口の行政ネットワーク」と題して行政サイドからの講演をお願いしたが、多くの人に新鮮な印象を与えた。

 他に5題のランチョンセミナー、そして最後にICD講習会を催した。2日間を通じて活発な討論が行なわれ、十分だと思っていた講演時間がしばしばオーバーし、主催者である我々をヒヤヒヤさせる程であった。

2日間ともに好天に恵まれ、会場側の佐賀城のお濠の周りを散策する参加者も多く、本学会を楽しんでもらったのではないかと喜んでいる。      

(佐賀大学医学部内科学教授 長澤 浩平)


第46回日本鼻科学会

平成19年9月27日から3日間、第46回日本鼻科学会が自治医科大学医学部耳鼻咽喉科教授の市村恵一先生の主宰で、栃木県総合文化センター(宇都宮市)で開催された。

初日は例年どおりに鼻科学基礎問題研究会、鼻科学臨床問題懇話会が行われ、新進気鋭の若手研究者や熟練した臨床医によって活気ある討論がなされた。
翌日は、市村会長が開会挨拶に続いて、本学会では初めての試みとして、会長講演「オスラー病患者の鼻出血への対応」を講演された。特別企画としては、英国のValerie Lund先生と米国の Donald Leopold先生による特別講演があり、海外の鼻科学の現状と新たな方向性が示された。

シンポジウムは、「鼻副鼻腔の組織修復」をテーマに、アレルギー性鼻炎のリモデリングと嗅上皮再生の機序に関して新たな知見が報告された。
パネルデイスカッションは「前・中頭蓋底へのアプローチ」と「鼻疾患に対する東洋医学的アプローチ」の二つが企画され、実地臨床に大いに役立つ報告と討論がなされた。また、昨年の学会に引き続き、日韓セッションと延世大学耳鼻咽喉科のJoo-Heon Yoon先生の招待講演も企画され、韓国との交流を深める良い機会となった。
その他、一般講演でも多くの興味深い基礎および臨床研究が報告され、鼻科学の進歩と奥の深さ今更ながらに感じる有意義な学会であった。

 (鹿児島大学大学院 聴覚頭頸部疾患学教授 黒野 祐一)


第44回日本小児アレルギー学会

今回の小児アレルギー学会は平成19年12月8日と9日の土、日曜に名古屋の国際会議場で藤田保健衛生大学坂文種報徳会病院小児科の宇理須厚雄教授。名古屋での開催は昭和63年の第25回大会が鳥居新平先生によって行われて依頼19年ぶり。

メインテーマは「小児アレルギーの今を見つめて未来を切り開く」。139の一般演題、ミニシンポジウム7つ、会長講演、特別講演2つ、招待講演4つ、教育講演2つ、教育セミナー12、シンポジウム9つ、ワークショップ2つを通して小児アレルギーの現状と新しい研究成果を紹介した。

このほかに、市民公開講座では「聞いて納得。話して解決。子供のアレルギーとのつきあい方」をテーマとして講演3題の他に展示、特異的IgE 抗体測定サービス(事前申し込み受付者のみ)が企画された。このIgE測定サービスは新しい企画として目を引いたが長い列となっていた。 

(国立病院機構福岡病院統括診療部長 小田嶋 博)


第37回日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会総会学術大会

第37回日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会総会学術大会は、藤田保健衛生大学皮膚科 松永佳世子教授を会長として、名古屋国際会議場で2007年12月14日〜16日に開催された。

どの分野でも学会の数が多くなったので、少しでも減らそうという動きが昨今活発になってきているが、本大会の名前をご覧いただくと容易に想像できるように2つの学会が合併したのである。
合併後、初めての学術大会ということもあって、37回という老練さと初回の活力が融合したようなそんな学会であった。

 本会の目玉は、「接触皮膚炎診療ガイドライン」「職業性皮膚疾患診療ガイドライン」「環境と皮膚アレルギー」「化粧品・化学物質の皮膚安全性の評価」「薬疹」「アトピー性皮膚炎2007」といったシンポジウム、ワークショップであった。
とても皮膚科領域らしいタイトルであるが、職業病の大半を占める接触皮膚炎や職業性皮膚疾患は産業医学の面からも注目度が高く、きわめて広い領域を包含する社会的な領域である。
一般演題は3分口演とポスター展示の両方を行う必要があり、多くの興味深い接触皮膚炎の病態を勉強できてとても有意義であった。

(九州大学大学院医学研究院・医学部皮膚科教授 古江増隆)


日本花粉学会第48回大会

平成19年9月21〜23日、岡山理科大学(大会長 三好教夫)で開催された。会場は美観地区の倉敷市で行われた。

花粉学会(高原 光会長)は学問の巾が広く、医学、薬学、理化学、農学、地学、昆虫学など多分野の先生方の学会で、その内容は自然科学系と医学・公衆衛生学の大きく2つに分かれている。

今年の学会賞受賞記念講演は山野井 徹先生(山形大学理学部地球環境学科)の「日本海域の花粉化石からみた新第三紀の植生の変遷」で日本海形成の初期から現在に至る海の地層についての膨大な研究を積み重ね、貴重な基礎資料を作り上げた成果を紹介された。

2日目の普及講演「花粉症治療の最前線」では岡山の飛散花粉、備讃空中花粉研究会の活動、花粉症をはじめとするアレルギー疾患の治療や健康機能食品などについて市民向けの講演会が行われた。
4年に一度の2012年国際花粉・古植物学会の誘致が決定し、2008年のボンでの学会時に誘致活動を行う予定である。

(国立病院機構福岡病院アレルギー科医長 岸川 禮子)


第12回日本心療内科学会総会・学術大会

第12回日本心療内科学会総会・学術大会が近畿大学名誉教授の中島重徳会長のもとで平成19年12月1,2日大阪国際交流センターにて行われました。財団法人日本アレルギー協会も共催でした。
中島先生はアレルギー協会の理事であり、日本アレルギー学会会長も務められました。

学会のテーマは「21世紀の基幹医療―心療内科への夢を求めて―」でした。
会長講演は「気管支喘息から学んだ心身医療」であり、先生の長年にわたる気管支喘息の臨床、研究についてストレスとの関連も含めて講演されました。若い頃からの研究や写真がでてきて大変素晴らしい講演でした。

特別講演は心療内科学会理事長の吾郷晋浩先生による「心身医療のエッセンスとその実践再考」でした。吾郷先生はアレルギーの心身医療をライフワークとしてきておられ、臨床の基本として、これまでの生物モデルではなく、心療内科的な生物・行動・心理・社会・環境・倫理的医学モデルに基づく全人的な医療を行うことを一般化する必要があると述べられました。

パネルディスカッションで「気管支喘息の心身医療―小児期、思春期、成人期、高齢者の特性―」があり、千葉太郎先生(盛岡友愛病院)と私が座長をしました。また、教育セミナーで十川 博先生(九州中央病院)の「気管支喘息に対する心身医学的治療」がありました。

このように本学会はアレルギー関連の心身医療についての発表が多く見られましたが、ほかにも生活習慣病や心理療法のシンポジウム、市民公開講座や歌曲の夕べもあり、充実した学会でした。

(九州大学大学院医学研究院・医学部心療内科教授 久保千春)


学 会 予 告

 第26回日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会

 

会 長:

荻野 敏(大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻 教授)

会 期:

2008年2月21日(木)〜23日(土)

  

会 場:

ホテル阪神

 第107回日本皮膚科学会総会

 

会 長:

伊藤 雅章(新潟大学大学院医歯学総合研究科細胞機能講座 教授)

会 期:

2008年4月18日(金)〜20日(日)

  

会 場:

国立京都国際会館

 第52回日本リウマチ学会総会・学術集会 ・ 第17回国際リウマチシンポジウム

 

会 長:

小池 隆夫(北海道大学大学院医学研究科内科学講座・第二内科 教授)

会 期:

2008年4月20日(木)〜23日(日)

  

会 場:

ロイトン札幌、北海道厚生年金会館、
札幌教育文化会館

 第48回日本呼吸器学会学術講演会

 

会 長:

曽根 三郎(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部分子制御内科学分野 教授)

会 期:

2008年6月15日(日)〜17日(火)

  

会 場:

神戸コンベンションセンター
(神戸国際会議場・展示場・ポートピアホテル)

 第25回日本小児難治喘息・アレルギー疾患学会

 

会 長:

南部 光彦(天理よろづ相談所病院 小児科部長)

会 期:

2008年5月31日(土)〜6月1日(日)

  

会 場:

おやさとやかた南右第二棟陽気ホール
研修室

 第20回日本アレルギー学会春季臨床大会

 

会 長:

工藤宏一郎(国立国際医療センター国際疾病センター長)

会 期:

2008年6月12日(木)〜14日(土)

  

会 場:

ホテル日航東京

 第39回日本職業・環境アレルギー学会総会・学術大会

 

会 長:

須甲 松伸(東京芸術大学保健管理センター 教授)

会 期:

2008年7月18日(金)〜19日(土)

  

会 場:

東京大学医学部鉄門記念講堂

 第109回日本耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会

 

会 長:

山下 敏夫(関西医科大学耳鼻咽喉科学教室 教授)

会 期:

2008年5月15日(木)〜17日(土)

  

会 場:

大阪国際会議場

 第49回日本心身医学会総会ならびに学術講演会

 

会 長:

小山 司(北海道大学大学院医学研究科神経病態学精神医学分野 教授)

会 期:

2008年6月12日(木)、13日(金)

  

会 場:

札幌コンベンションセンター


研 修 会 ・ 講 演 会 予 告

 第14回アレルギー週間記念講演会

 

主 催:

(財)日本アレルギー協会九州支部

会 期:

2008年2月24日(日)13時より

  

会 場:

天神ビル11階(福岡市)

 第7回アレルギー・臨床免疫医を目指す人達の為の研修会

 

主 催:

(財)日本アレルギー協会九州支部

会 期:

2008年3月22日(土)〜23日(日)

  

会 場:

八重洲博多ビル(福岡市)


九 州 支 部 研 究 助 成

 研究課題
研究者(所属)
実施期間

1)

咳喘息(cough variant asthma)の病態解明と抗炎症療法(継続2回目)

下田 照文
(独)国立病院機構 福岡病院
17年7月〜
19年12月

2)

6ヶ月〜4歳の日本小児気管支喘息患者を対象としたブデソニド吸入用懸濁液のメッシュ式ネプライザーによる吸入の有効性及び安全性を検討

小田嶋 博
(独)国立病院機構 福岡病院
18年11月〜
19年10月

3)

ルリコンクリーム1%の足白癬に対する有効性調査
−角質増殖型足白癬に対するルリコンクリームと尿素軟膏との併用効果−

高原 正和
九州大学付属病院 皮膚科
19年11月〜
21年3月

4)

小児気管支喘息の経過に対するライノウイルス感染の影響とその抑制に関する研究

小田嶋 博
(独)国立病院機構 福岡病院
19年10月〜
20年6月


前ページへ

 

 

次ページへ