K・Kニュース vol.3(2002年12月号)


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200字コメント

(今回も、多数の方からコメントを頂きました!)

○研修医制度

 研修医制度が基本的臨床能力を持つ医師育成を目標に改革される。改革は必ず大きな損得が生じるために先が見えるものではない。しかし、医療は公的な仕事であることから患者の有益性を基本にフレキシブルな制度の改革が必要であろう。医師は、総合的臨床能力を持ち個人や患者の多様性に対応できなくてはならない。その能力が信頼される幅の広い医師像の一つであるが、その育成には大学や病院の能力の向上と個人の生涯学習が必要であろう。

(興梠 博次)


○食物アレルギー

 食物アレルギーの患者さんがふえているためか、最近入院患者さんと病院栄養管理室とのトラブルが少なくない。とくに小児では、保護者が過剰に反応して、入院時に色々給食に注文をつける。本当にアレルギー反応が強い患者さんには、十分配慮しているが、軽度の子供でも卵、牛乳その加工品も一切だめ、赤身の魚も出さないでくれといわれると、栄養室は何を調理してよいか苦慮しているのが現状である。

(宮崎 澄雄)


○イギリスのお客さん

 イギリスのお客さんが来られたが、1時間の案内時間しかなかったので、九大病院近くの崇福寺を案内した。早朝ではあったが、お百度参りの参拝者が数名おられた。母国にもお百度参りの信仰があるということでいたく感激されていた。お地蔵さんの前垂れに興味をもたれたようで、あれは何のためにつけているのかと聞かれて困ったあげく、よだれかけだと答えてしまったが、きっと信用していないと思う。どなたか答えを教えてください。

(古江 増隆)


○アレルギー性緊張弛緩症候群

 気管支喘息やアトピー性皮膚炎の子供を診察して、不登校、ひきこもり、多動、徘徊などの行動異常があると、まずアレルギーを疑ってみる必要がある。ダニと食餌とはアレルゲンとして重要で、これらの除去乃至遮断によって、劇的に愁訴の改善をみることがある。アレルギー性緊張弛緩症候群という病名は、学界でも異論があるのが現状だが、私は30余年の施設療法の体験から、この病名の存在は確からしいと思っている。

(岡崎 禮治)


○抗アレルギー薬の選択

 最近次々と新しい抗アレルギー薬が市販され、名前を覚えるのに苦労させられるほどである。しかし、その作用や服用方法にはそれぞれ特徴があり、症状のみならず、病態や患者さんのニーズにも合わせて選択できる利点がある。OTCに走る傾向が年々高まっていると言われる患者さんの目を我々医師に再度向かせるためにも、薬物治療を含め、科学的根拠に基づいた細やかな診療を行っていくことが必要であり、それができる時代になったと感じる。

(黒野 祐一)

 

○今携わっている職場

 今携わっている職場は高齢者の医療・介護施設で、当然そこではアレルギー疾患の長期予後がライフスパンの末端付近で観察されるわけになる。結論から先にいえば、気管支喘息ではほとんどが軽症と思える症例である。呼吸不全例は多くはないがそれも肺気腫型のCOPDで、喘息の関与は小さい。かつては中等症以上であった喘息者も"鎮火のくすぶり"程度で、多くはテオフィリンで調整されている。
 小児科領域でいわれるアレルギーマーチをライフスパンに延長すると、ここに一つのパターンが付けられよう。これにはリモデリングという組織の再構築とILメディア機能の退化が大きく関与してくるのであろう。つまりはアレルギー反応の減衰が免疫応答機能の低下に伴っていることがうなづける。しかし、"老人性皮膚掻痒症"とよばれる症状の多いのには手を焼く。ヒスタミンの自己主張は終生不易なのであろうか。

(井上 虎夫)


○掌蹠膿疱症や汗疱状湿疹の患者さん

 掌蹠膿疱症や汗疱状湿疹の患者さんは比較的多く、年間約50例程度来院する。この病因については、病巣感染と並んで、本邦では歯科金属アレルギーが原因と考えられてきた。しかし次第に歯科領域においても、う歯や根尖病巣が重視されるようになり、次第に歯科金属アレルギー説が弱くなってきている。しかし、明らかに金属パッチテストで、膿疱を認め掌蹠膿疱症の原因と推定しうる患者さんもいることも事実で、今後このような患者さんについて、その発症機序を解明して行きたい。

(藤原 作平)


○私の勤務している大学

 私の勤務している大学の医学生に、臨床実習の一環で即時型皮内反応検査をさせています。その結果は学生の75%以上がダニアレルギー反応陽性です。しかしながら、その時点で、陽性の学生のすべてがアレルギー症状をしめしているわけではありません。検査をして、自分が陽性であることに驚く学生がたくさんいます。抗原に加えて何らかの環境要因が発症に関与しているのでしょうが、その機序をきちんと解明することはアレルギー専門医にとって解決すべき大きな課題であるとあらためて感じているこの頃です。

(濱崎 雄平)


○アレルギー疾患

 アレルギー疾患は年々増加傾向を示し、その病態も極めて複雑多岐である。日本アレルギー協会主催のアレルギー週間行事も今や各県支部で完全に定着して来た。此処沖縄でも呼吸器科、耳鼻科、皮膚科、眼科などの専門家が中心となり、関連医師集団はもとより、一般臨床家や市民団体などをも巻き込んで一同に会した講演会が活発に行われ、協会の目的とする此の分野の臨床医学の向上と予防活動の啓蒙に大きな成果を上げつつあり、今後とも、その活動の輪を更に拡大したいと念じている。今後とも、貴協会の御支援賜わりたい。

(宮城征四郎)

 

○In vitro

 In vitroでの、あるいは動物モデルを使った基礎研究なら収受の条件を自由に設定し、得られるデータから真実が見えてくるのであろうが、こと人を使った臨床研究となるとあまりにも多くの条件がありすぎて完全に施設ごとの結果を比較できるということはあり得ない。当たり前と言われれば当たり前であるが、先日のある学会である疾患で半ば常識になっている事柄が、実は大学病院や大病院でのデータを根拠としているのであって、それより遥に患者数の多い開業医の認識とは甚だずれているということを思い知らされた。いわゆる臨床研究から推察される真実は絶えず疑わしいものであると考えることも必要である。

(鈴木 正志)


○ペットは悪玉か善玉か

 アレルギーの発症には遺伝と環境が深く関わっていることは確かである。しかし両者の関係はまだ明かではない。それでもアレルギー疾患がこの30年に大幅に増えていることは、環境が強く影響していることを示している。
 最近の報告を見ると幼児期の微生物への暴露が重要な疫学的要因であるという指摘がある。具体的な話題としては、乳児期にイヌやネコと一緒に生活した方がアトピーの発症が少なくなるという研究報告がある(勿論、反論もある)。しかし、ネコなどのアレルゲンに一旦感作された後は、やはり抗原回避は予防的にも重要であることに変わりはないと思われる。そうなると家でペットを飼うことの是非を親や家族にどう説明したらよいか難しい問題である。

(江頭 洋祐)


○病気の発症に寄与する遺伝子

 病気の発症に寄与する遺伝子を明かにすることを目的とした疾病のゲノム解析が、国の支援を受けてスタートしている。たとえばスギ花粉症のようなアレルギー疾患も、環境要因としてスギ花粉が直接疾患の原因となっていることは勿論であるが、遺伝要因の寄与もまた知られている。環境要因と遺伝要因の相互作用の解明は、病気の真の理解を促し、根本的な治療法、それも個人個人に合った治療法の開発に取って必須のことである。

(笹月 健彦)


○続・アレルギー科の役割

 前回の200字コメントの拙文の中で「アレルギー科は誰が診るのか?」は「アレルギー科は誰を診るのか?」の誤植です。これで文脈が通じます。(お暇な方は読み返してください。)しかし、「アレルギー科は誰が診るのか?」という間違い文自体は実はとても重要で大きなテーマなのです。スペシャリストとしての「アレルギー科医」は、ひとりで「アレルギー」と名の付くすべての疾患・患者を診るべきなのか、それとも「内科」・「小児科」・「耳鼻科」・「皮膚科」・「眼科」など(「心療内科」や「リウマチ科」も必要?)の医師が医師団を形成して診察すべきなのか。なかなか難しい問題です。皆さんはどちらがよいと思われますか?

(庄司 俊輔)


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