K・Kニュース vol.5(2004年1月号)
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(今回、9名の方からコメントを頂きました!) |
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久留米大学医学部第一内科 教授 相澤 久道
COPDガイドラインの要約
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GOLDガイドラインは2001年にWHOとNIHが合同で発表したワークショップレポートであるが、2003年8月にその改訂版が出された。COPDは現在世界の死亡原因の第4位であり、その有病率は今後さらに上昇することが予想されている。このような背景の中、このGOLDガイドラインが最終的に目標とするところは、COPDの予防及び管理を向上させ、それによりこの疾患の罹患率及び死亡率を低下させることである。そのためには、医師や一般人のCOPDへの認識を高めるとともに特に医学関係者にCOPDに対する新たな研究の興味を換気するすることをも目標としている。ここでは、簡単にその内容について触れたい。
まず、定義としては「COPDは完全には可逆的ではない気流制限を特徴とする疾患である。この気流制限は通常進行性であり、有害な粒子またはガスに対する異常な炎症反応と関連している。」としている。すなわち、図1に示したように炎症反応により気道と肺実質両方の変化が引き起こされるとしているが、気管支喘息の気道炎症とは機序が異なると考えられている(表1)。
表1 COPDと喘息の炎症の特徴
COPD 喘息 炎症細胞
・好中球
・マクロファージの高度増加
・CD8+Tリンパ球・好酸球
・マクロファージの軽度増加
・CD4+Tリンパ球
・肥満細胞の活性化メディエーター
・LTB4
・IL-8
・TNF-α・LTD4
・IL-4、IL-5
・その他多くのメディエーター組 織
・上皮の扁平上皮化生
・肺実質の破壊
・粘液細胞の増生
・粘液腺の肥大・上皮障害
・基底膜の肥厚
・粘液細胞の増生
・粘液腺の肥大治療に対する反応
・ステロイドは効果が小さいか無効
・ステロイドが有効
その原因としては、煙草が圧倒的に重要であり、少数例では大気汚染や職業性因子の曝露、遺伝的異常なども原因としてあげられる。これらの刺激に慢性的に曝露された際、感受性のある人では、先ず咳や痰などの症状に始まり、次いで軽度の労作時の呼吸苦が加わり、次第にその程度が進行する。肺の中で起こっている変化は、咳や痰などの初期には末梢気道の炎症性変化から始まり、気道病変の進行と過分泌、また肺胞領域への炎症の進展とそれによる構造の破壊へと進んでいくと考えられている。
したがって、COPDは初期の段階で診断し、病変が進行しリモデリングが起こるのを出来るだけ防ぐことが大切であり、そのためにはスパイログラムが不可欠な検査である。治療は表2に示したように、重症度が変更されたが基本的内容は同じである。危険因子の回避としては、禁煙とインフルエンザワクチンを全てのステージで行う。軽症では、気管支拡張薬の頓用から行い、ステージが進むにつれて長時間作動型気管支拡張薬のレギュラーユースを1剤以上組み合わせて行う。さらに重症になれば、吸入ステロイド、在宅酸素療法、外科療法などを追加する。
表2 COPDの各ステージの治療
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国立療養所南福岡病院 小児科医長 岡田 賢司
今冬のSARS対策について
------------------------------SARS(重症急性呼吸器症候群)は、SARSコロナウィルスを病原体とする新しい感染症です。今冬の国の対策をまとめてみました。
1.今冬のSARSへの対策
(1)情報の収集と提供:WHOなどが公表するSARS情報は迅速に収集され、ホームページに掲載されています。
・厚生労働省
(http://www.mhlw.go.jp)
・国立感染症研究所
(http://idsc.nih.go.jp)
・厚生労働省検疫所(海外渡航者のための感染症情報)
(http://www.forth.go.jp)
※医療期間への受診:38℃以上の発熱又はせき等の症状があり、流行地域から帰ってきた方は、必ず事前に最寄りの保健所又は医療機関に電話で相談の上、指示に従うよう指導をお願いします。
(2)相談窓口の設置:インフルエンザ・SARSに関する相談窓口が設置されています。
開 設:
平成15年10月20日〜平成16年3月19日
対応日時:
月曜日〜金曜日(祝日を除く) 9:30〜17:00
電 話:
03-3200-6784
FAX:
03-3200-5209
e-mail:
inful@npo-bmsa.org
2.国外でSARS患者が発生した場合の対応
(1) 渡航に関する助言:不要不急の旅行は延期するよう勧告される。
(2) 質問票の配付:流行地域からの航空便は、機内で質問票を配付され、健康状態の確認。
(3) 体温測定の実施:発熱者の確認のため、サーモグラフィーや体温計により体温測定。
(4) 入国後の健康状態の確認:SARSを治療している医療従事者および患者と接触のあった入国者については、入国後も潜伏期間内は、検疫所への体温等の健康状態の報告が義務付けられます。万一異常が生じた場合は、検疫所から入国者の都道府県に通知されます。通知を受けた都道府県は、直ちに調査を行い、入院等の必要な措置を講ずることになります。
(5) 動物等の輸入禁止:SARS類似コロナウイルスが分離されたハクビシン等の動物の輸入を禁止しています。
3.国内にSARS患者が出た場合の対応
SARS患者に入院勧告等の行政措置がとられた場合、個人のプライバシーに最大限配慮し、公表が必要な情報は迅速に公開されます。さらに、対策本部・オペレーションセンターが開設され、積極的疫学調査とまん延防止のための対策がとられる予定です。
(1)医療の確保:都道府県において、SARS診療を担当する医療提供体制の整備が行われています。
1) 入院対応医療機関:全国で287施設が整備されています。
2) 外来診療協力医療機関:全国で759施設が整備されています。(平成15年10月6日現在)
3) 感染防御資器材等への補助:SARS患者が、一般医療機関を受診した場合に備え、院内感染防御のためのマスク・ガウン等の備蓄に対しても補助が行われています。
(2)院内感染等の予防:「SARS管理指針」「SARSに対する消毒法」を医療機関に周知し、SARS患者を受け入れる医療機関での院内感染対策の徹底が図られています。