K・Kニュース vol.5(2004年1月号)


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200字コメント

(今回、9名の方からコメントを頂きました!)

○闇研(やみけん)

 今日は日頃のぼやきを一つ。「闇研(やみけん)」について。この言葉がわからない若い人、特に大学院生は要注意。与えられたテーマ以外のテーマについて、自分の自由時間、特にボスのいない夜遅くあるいは土日に研究すること。「闇研」が死語になりつつある理由は、1)大学院生が自分の研究テーマについて深く自問自答しない。2)大学院生が大学で自由時間を過ごす余裕がない。3)これは私の反省を含むが、あれやこれやとかまい過ぎて、真の独立した研究者を育てていないのではないかという危惧。

(藤原 作平)


○ベトナムの医療と経済

 私は縁あってベトナムの耳鼻咽喉科病院ならびにそこで働く耳鼻咽喉科の先生方と親しくして頂いている。7000万人強の人口に6つの医学部しかなく、そこを卒業した医師達は誇り高くも真摯であり、医療に対する気力や意欲は余り有るほどであるが、日本と比較して彼の地の病院はきれいではないし、設備や診療機器・手術機器等はとても充分とは言えない。従って、外来での診療や治療、入院での手術は日本には及ぶべくもないが、逆に手先の器用な彼等が経済力をつければ、日本に肩を並べるのもそう先のことではないと思う。
 ご多分に漏れず医療も経済に左右されるのだと改めて思い知らされている。   

 (鈴木正志)


○皮膚科白書

 本年暮れに皮膚科学会から「皮膚科白書」という冊子が刊行される。名前からも想像出来るように患者さんへの啓発書ではなく、医療行政関係者への働きかけを目的として作成されたもので「皮膚科医療の現状と社会貢献度の実態、皮膚科の将来性をアピールするための内容」などが網羅された構成になっている。

 重要なアレルギー疾患なども含まれ、先生方の目に触れる機会もあるかと思いますが、ご覧になられた先生方には忌憚のないご意見など頂ければ幸甚です。

(片山一朗)

 

○気になる薬

 今、アレルギー関係で気になる薬が2つ。
 1つはエピペン(自己注射型エピネフリン)。ハチ毒によるアナフィラキシーの適応は今夏に許可されたが、食物や薬物によるショックには未対応。患者・家族・周辺社会の整備が必要なこれからの薬。
 もう1つはプロトピック軟膏小児用(免疫調整薬)。アトピー性皮膚炎の外用薬としてはステロイド以来の有望な薬。前車の轍を踏まぬ対応が要求され、皮膚科と小児科の協力体制が必要。

(西間三馨)


○『群盲、象を撫でるが如し』

 『群盲、象を撫でるが如し』と唱えて久しい。アレルギーを勉強する人々にとってこの比喩は、果てしない巨大な課題に付けられた表現としてまことにピッタリであった。
 だが、それはUFOではない。この20年ほど分子生物化学的研究で実証が進み、心身医学的研究でも生体反応のtriggerたる因子の大なることも示されつつある。高齢者医療にたずさわっている私がその免疫力のあり方を考えるとき、ヒントになる知見が増えている。

 (井上とら夫)


○はなづまり、はなごえと中鼻道

 最近、H大学元学長で、声楽家としても有名な耳鼻咽喉科医が、自身の術後中鼻道粘膜の後端部を内視鏡下に発声しながら自らレーザー焼灼し、鼻閉感の消失と共に音声が良く通り共鳴の点でも納得ゆく改善がみられたことを話していた。鼻アレルギーのレーザー治療でも、下鼻甲介粘膜の焼灼、減量が試みられるが、中鼻道側を入念に焼灼することが大切である。
 中鼻道の開大といえば、本来、副鼻腔炎洞貯留液の排除や換気改善効果を狙って行われるが、鼻アレルギー治療においても、これが鼻閉や鼻声改善に極めて重要かつ効果的なことを銘記すべきである。

(大山 勝)

 

○医療事故とアレルギーの相関

 アレルギー疾患は20年間に倍増している。マスコミ報道によると医療事故も倍増している。そしてこの両者に共通するのは若い人のひとりよがりではないかと思う。
 医療現場では先人の経験や知恵を軽んじて失敗する。ダニ・アレルギーに関してはプリックテストやRAST検査でダニ陽性の家庭を調べると、居間もフトンもダニの生体や死骸がいっぱいで、家の人は皆着飾っていて平気である。

(岡崎禮治)


○今年の喘息のシーズン

 今年も喘息のシーズンが終わろうとしています。急激に気温が下がった時期に一致して発作の子供たちがぱらぱらと入院しました。ぱらぱらという印象で、その後は落ち着いています。ガイドラインが浸透してきて、治療法の標準化が進んで、日常のコントロールが良好になり軽い発作ですんでいるのでしょうか?
 大発作で入院する子供たちの多くは日ごろ外来で管理をしている子供たちではなく、飛び込みの患者さんです。今後は、医師だけではなく、患者さんおよび家族に適切な情報を提供していくことがますます重要になってくるでしょう。

(濱崎雄平)


○アレルギー認定医・専門医

 ある地方新聞社からアレルギー性鼻炎に関する紙上診断の依頼があり、結びに月並みな文句ではあるが、「ぜひ専門医にご相談下さい」と記した。しかし、ふと鹿児島に何人の専門医がいるのかと思ってアレルギー認定医・専門医名簿をみて驚いた。全国1,532名の認定医・専門医のうち、本県の耳鼻咽喉科には私を入れて2名しかいない。このまま報道されると、とんでもない混乱を招くと思いこの結びを削除し、もっと指導をしなければと痛切に感じた次第である。

(黒野祐一)


 

COPDガイドラインの要約

久留米大学医学部第一内科 教授 相澤 久道
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 GOLDガイドラインは2001年にWHOとNIHが合同で発表したワークショップレポートであるが、2003年8月にその改訂版が出された。COPDは現在世界の死亡原因の第4位であり、その有病率は今後さらに上昇することが予想されている。このような背景の中、このGOLDガイドラインが最終的に目標とするところは、COPDの予防及び管理を向上させ、それによりこの疾患の罹患率及び死亡率を低下させることである。そのためには、医師や一般人のCOPDへの認識を高めるとともに特に医学関係者にCOPDに対する新たな研究の興味を換気するすることをも目標としている。ここでは、簡単にその内容について触れたい。

 まず、定義としては「COPDは完全には可逆的ではない気流制限を特徴とする疾患である。この気流制限は通常進行性であり、有害な粒子またはガスに対する異常な炎症反応と関連している。」としている。すなわち、図1に示したように炎症反応により気道と肺実質両方の変化が引き起こされるとしているが、気管支喘息の気道炎症とは機序が異なると考えられている(表1)

表1 COPDと喘息の炎症の特徴

 

COPD
喘息

炎症細胞

・好中球
・マクロファージの高度増加
・CD8+Tリンパ球

・好酸球
・マクロファージの軽度増加
・CD4+Tリンパ球
・肥満細胞の活性化

メディエーター

・LTB4
・IL-8
・TNF-α

・LTD4
・IL-4、IL-5
・その他多くのメディエーター

組 織

・上皮の扁平上皮化生
・肺実質の破壊
・粘液細胞の増生
・粘液腺の肥大

・上皮障害
・基底膜の肥厚
・粘液細胞の増生
・粘液腺の肥大

治療に対する反応

・ステロイドは効果が小さいか無効

・ステロイドが有効

 その原因としては、煙草が圧倒的に重要であり、少数例では大気汚染や職業性因子の曝露、遺伝的異常なども原因としてあげられる。これらの刺激に慢性的に曝露された際、感受性のある人では、先ず咳や痰などの症状に始まり、次いで軽度の労作時の呼吸苦が加わり、次第にその程度が進行する。肺の中で起こっている変化は、咳や痰などの初期には末梢気道の炎症性変化から始まり、気道病変の進行と過分泌、また肺胞領域への炎症の進展とそれによる構造の破壊へと進んでいくと考えられている。

 したがって、COPDは初期の段階で診断し、病変が進行しリモデリングが起こるのを出来るだけ防ぐことが大切であり、そのためにはスパイログラムが不可欠な検査である。治療は表2に示したように、重症度が変更されたが基本的内容は同じである。危険因子の回避としては、禁煙とインフルエンザワクチンを全てのステージで行う。軽症では、気管支拡張薬の頓用から行い、ステージが進むにつれて長時間作動型気管支拡張薬のレギュラーユースを1剤以上組み合わせて行う。さらに重症になれば、吸入ステロイド、在宅酸素療法、外科療法などを追加する。

表2 COPDの各ステージの治療
旧GOLD
O:潜在期
I:軽症
II:中等症
III:重症
IIA
IIB
新GOLD
O:潜在期
I:軽症
II:中等症
III:重症
IV:最重症
特 徴

・慢性症状
・危険因子の曝露
・スパイロ正常

・FEV1/FVC<70%
・FEV1>80%
・症状は有か無

・FEV1/FVC<70%
・50%=<FEV1<80%
・症状は有か無

・FEV1/FVC<70%
・30%=<FEV1<50%
・症状は有か無

・FEV1/FVC<70%
・FEV1<30%
・慢性呼吸不全か肺性心

 

危険因子の回避:インフルエンザワクチン

 

 

短時間作動性気管支拡張薬追加

 

 

 

長時間作動性気管支拡張薬1剤以上定時使用追加
リハビリテーション追加

 

 

 

 

吸入ステロイド追加(憎悪を繰り返す時)

 

 

 

 

 

慢性呼吸不全があれば
酸素療法・外科療法を考慮


 

今冬のSARS対策について

国立療養所南福岡病院 小児科医長 岡田 賢司
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 SARS(重症急性呼吸器症候群)は、SARSコロナウィルスを病原体とする新しい感染症です。今冬の国の対策をまとめてみました。

1.今冬のSARSへの対策

(1)情報の収集と提供:WHOなどが公表するSARS情報は迅速に収集され、ホームページに掲載されています。

・厚生労働省

(http://www.mhlw.go.jp)

・国立感染症研究所

(http://idsc.nih.go.jp)

・厚生労働省検疫所(海外渡航者のための感染症情報)

(http://www.forth.go.jp) 

※医療期間への受診:38℃以上の発熱又はせき等の症状があり、流行地域から帰ってきた方は、必ず事前に最寄りの保健所又は医療機関に電話で相談の上、指示に従うよう指導をお願いします。

(2)相談窓口の設置:インフルエンザ・SARSに関する相談窓口が設置されています。

開   設:

平成15年10月20日〜平成16年3月19日

対応日時:

月曜日〜金曜日(祝日を除く) 9:30〜17:00

電   話:

03-3200-6784

FAX:

03-3200-5209

e-mail:

inful@npo-bmsa.org

2.国外でSARS患者が発生した場合の対応

(1)

渡航に関する助言:不要不急の旅行は延期するよう勧告される。

(2)

質問票の配付:流行地域からの航空便は、機内で質問票を配付され、健康状態の確認。

(3)

体温測定の実施:発熱者の確認のため、サーモグラフィーや体温計により体温測定。

(4)

入国後の健康状態の確認:SARSを治療している医療従事者および患者と接触のあった入国者については、入国後も潜伏期間内は、検疫所への体温等の健康状態の報告が義務付けられます。万一異常が生じた場合は、検疫所から入国者の都道府県に通知されます。通知を受けた都道府県は、直ちに調査を行い、入院等の必要な措置を講ずることになります。

(5)

動物等の輸入禁止:SARS類似コロナウイルスが分離されたハクビシン等の動物の輸入を禁止しています。

3.国内にSARS患者が出た場合の対応

 SARS患者に入院勧告等の行政措置がとられた場合、個人のプライバシーに最大限配慮し、公表が必要な情報は迅速に公開されます。さらに、対策本部・オペレーションセンターが開設され、積極的疫学調査とまん延防止のための対策がとられる予定です。

(1)医療の確保:都道府県において、SARS診療を担当する医療提供体制の整備が行われています。
1)

入院対応医療機関:全国で287施設が整備されています。

2)

外来診療協力医療機関:全国で759施設が整備されています。(平成15年10月6日現在)

3)

感染防御資器材等への補助:SARS患者が、一般医療機関を受診した場合に備え、院内感染防御のためのマスク・ガウン等の備蓄に対しても補助が行われています。

(2)院内感染等の予防:「SARS管理指針」「SARSに対する消毒法」を医療機関に周知し、SARS患者を受け入れる医療機関での院内感染対策の徹底が図られています。


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