K・Kニュース vol.6(2004年7月号)


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第16回日本アレルギー学会春季臨床大会

 第16回日本アレルギー学会春季臨床大会は、5月12日〜14日の3日間、群馬県前橋市で、会長中沢次男先生により行われた。前橋市は丁度、新緑の大変美しい季節であり、赤城山も大変美しく望むことができた。アレルギー疾患の夫々について研究や治療の現状について解説や討論が行われ、明日の診療の参考となる点も多い学会であった。以下、その内のいくつかの点について記してみたい。

 アトピー性皮膚炎についてのシンポジウムでは皮膚科における研究の現状と考え方についての話があった。Th1、Th2とIgEの関与についての総説やバリア機能とその破壊についての話があった。中で明日の臨床にすぐ役立つ話としては、尿素剤が皮膚の水分量を保つが同時にバリアを破壊してしまうので治りがよくないこと、セラミド含有剤が最も有効であることの分かりやすい説明がなされた。テオフィリンに関しては、今日議論の多い所であるが、新しくリモデリングに対する抑制効果があるなどの研究が紹介された。また、PDE阻害作用以外の抗炎症作用があるのではないかとの報告もあった。

 蜂アレルギーの治療として、減感作について報告され、日本では95%の有効率であり、これは欧米と同様の有効率であった。又、5年間位は続けた方がいいとの事であった。刺された時に全身症状のあった人は免疫療法を勧める。この場合には減感作の副作用は、スズメバチ、アシナガバチでは約1%、ミツバチでは30%みられるが、抗ヒスタミン薬の内服を前もって行えば治療は続けられるとの事であった。又、小児については、米国では重症になることが少ないことなどから、免疫療法は勧めていないとの事であった。スズメバチ、アシナガバチには共通抗原性があるので、この内の1つでいいが、ミツバチは別である事など具体的な減感作の方法が示された。又、エピペンをどのような人に持たせるか等についてのプロトコールも示された。

 今学会では、丁度、最近使用可能となったエピペンの講習会も行われるなど、最近の治療の進歩その実施とが連携した学会であった。

(国立病院機構福岡病院統括診療部長 小田嶋 博 記)



第22回日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会

 第22回日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会が平成16年3月25〜27日、札幌医科大学教授氷見徹夫教授会長のもとに札幌市ホテルロイトンで開催された。今回の学会テーマは、「免疫アレルギー疾患の新展開-研究の最前線と臨床の接点」であり、本学会の設立ヴィジョンそのものを表現したキャッチフレーズであった。

 恒例の教育研修会では ク「Th1/Th2細胞免疫システムの形成と維持」と題する千葉大学免疫細胞医学教授中山俊憲氏の講演と、ケ「生体防御レクチンによる自然免疫機構」と題する札幌医科大学第一生化学教授黒木由夫氏の講演が行われた。又、「生体防御反応のコーディネーター、オステオボンチンのバイオロジー」と題する北海道大学分子免疫学教授上出利光氏の特別講演が行われた。学会のイヴェントとして注目されるシンポジウムの課題は「免疫応答の制御による治療戦略」であり、免疫療法、抗体療法を初めとするホットな問題を含み、本学会の着実な進歩がうかがえる充実した内容の企画であった。

(熊本大学名誉教授 石川 哮 記)



第44回日本呼吸器学会学術講演会

 日本大学医学部第一内科堀江孝至教授の会長の下で平成16年3月31日〜4月2日に東京国際フォーラムにて開催された。学会場はとても広く慣れるまでは会場間の移動に迷ってしまう程で、又、昨今の情勢のためか警備員が要所に配置され名札のチェックも例年以上に厳しく感じた。今回のメインテーマは、基礎から臨床へのトランスレーショネルリサーチの発展を期待して「基礎と臨床の融合」であった。そのためにシンポジウムでは、毎日「各種呼吸器疾患の発症メカニズムから治療への展開」のタイトルで、気管支喘息、特発性間質性肺炎、呼吸器感染症、COPD、ARDS/ATL、肺癌、睡眠時無呼吸症候群の7疾患が取り上げられ、基礎から臨床まで活発な質疑応答が行われた。

 今まで以上に基礎と臨床の研究者が協力していこうという姿勢を強調しており、これは最近の各学会の傾向のようです。例年通り、シンポジウム、ワークショップ、イブニングシンポジウム、招請講演、特別講演、教育講演、市民公開講座、APSR Workshop、International program、呼吸ケアカンファレンス、呼吸器セミナー、ランチョンセミナー、イブニングシンポジウムなど盛り沢山の内容だったが、各会場は必ずしも一杯ではなく会場間でバラツキが見られた。喘息のセッションは比較的多くの聴衆が参加し会場によっては立ち見が出るほどで、又、特発性間質性肺炎の治療のランチョンセミナーは早々と整理券が終了するほどの人気だった。

 学会参加者の多くが臨床医であり、現在の興味ある疾患を表しているようであった。東京の桜もすでに葉桜となっていたが、好天に恵まれ、素敵な学会および観光日和だった。

(国立病院機構福岡病院臨床研究部部長 下田照文 記)



Annual Meeting 2004

〜The 60th American Academy of Allergy Asthma & Immunology〜

 2004年3月19〜24日、サンフランシスコにおいて開催された。現地時間19日昼、到着した。昼間は暖かく夜になると冷え込んでいたが、街路樹の桜は葉桜になっていた。会員が6000人を超える学会であり、国際的な雰囲気の中で多くの日本の先生方がそれぞれに活躍されているのを垣間見た。

 プログラムを見ると毎日たくさんのワークショップ、シンポジウムの他、土・日は各々50ものセミナーが設定され、学会関係の小委員会が60以上あったのには驚いた。有料セミナーも含め、誰もがバランスよく勉強できるように贅沢な人材と場が準備されていた。Hot Topic for ClinicianとしてSkin Testing and Immunotherapy : The Basics and Beyond, Part 1〜3、Mold Allergy and Mold Hysteria、New Treatment Modalities for Allergic Disease、Genetics, the Environment and AsthmaそしてThe Origins and Prevention of Atopy and Asthmaで免疫療法がHOTな話題の一つになっていた。

 一般演題はポスターが主で毎日約300題の演題が4日間にわたりデイスカッションが行われた。吸入ステロイドと長期作用β刺激薬の単独または組み合わせによる効果の違いやLT拮抗薬MontelukastやTheophillinとの組み合わせによる違い、抗IgE 抗体のOmalizumabの効果などの演題が見られていた。選択的PDE4 inhibitorの薬理動態や作用機序に関するものもあった。口演では喘息関係は小児喘息とEndtoxinをキーワードに環境のコントロールに関する演題が多く見られていた。免疫・アレルギー全体を網羅した巨大な学会という印象であった。Severe Asthmaの新しい治療法として抗IgE抗体のOmalizumabの効果が注目をあびていたが、多くの抗サイトカイン療法が現実のものとなりつつある状況が紹介されていた。

 図は皮肉なのだろうかと思いながら興味深く見つけたものである。

(国立病院機構福岡病院アレルギー科 岸川禮子 記)


学会・研修会・講習会 予告

 第54回日本アレルギー学会総会

 

会 長:

秋山一男(国立病院機構相模原病院臨床研究センター)

会 期:

平成16年11月4日(木)〜6日(土)

  

会 場:

パシフィコ横浜

 第41回日本小児アレルギー学会

 

会 長:

松井猛彦(東京都立荏原病院)

会 期:

平成16年11月27日(土)〜28日(日) 

  

会 場:

東京・都市センターホテル

 第35回日本職業環境アレルギー学会

 

会 長:

日下幸則(福井大学医学部環境保健学)

会 期:

平成16年9月10日(金)〜11日(土) 

  

会 場:

福井県国際交流会館

 第4回アレルギー臨床免疫医を目指す人達の為の研修会

 

主 催:

(財)日本アレルギー協会九州支部

会 期:

平成17年3月5日(土)〜6日(日) 

  

会 場:

八重洲博多ビル(福岡市)

 第11回アレルギー週間「一般市民向け講演会」

 

主 催:

(財)日本アレルギー協会九州支部

会 期:

平成17年2月27日(日)

  

会 場:

天神ビル本館(福岡市)


九 州 支 部 研 究 助 成

 研究課題
研究者(所属)
実施期間

1)

徐放性テオフィリン薬とロイコトリエン拮抗薬の抗炎効果並びに呼吸音改善効果に対する比較研究

下田 照文
(国立病院機構福岡病院)
14年9月〜
15年8月

2)

咳喘息(cough variant asthma)の病態解明と抗炎症療法

下田 照文
(国立病院機構福岡病院)
14年9月〜
15年12月

3)

自己免疫性甲状腺炎の遺伝要因の解明

山本  健
(九州大学生体防御医学研究所)
15年2月〜
16年2月

4)

免疫高次機能を司る細胞骨格制御機構の解明

福井 宣規
(九州大学生体防御医学研究所)
15年2月〜
16年2月

5)

β2吸入液とDSCG吸入液の併用効果並びに気道炎症改善効果に対する比較研究

下田 照文
(国立病院機構福岡病院)
15年1月〜
15年12月

6)

花粉症を対象としたQOL調査

石川  哮
(熊本大学名誉教授)
15年2月〜
15年3月

7)

高張食塩水吸入誘発喀痰を用いた吸入ステロイドの坑炎症効果の評価

下田 照文
(国立病院機構福岡病院)
16年1月〜
17年12月

8)

成人間欠型喘息(ステップ1)に対するEarly Intervention の気道炎症による評価

下田 照文
(国立病院機構福岡病院)
16年1月〜
17年12月

9)

小児喘息に対するEarly Interventionの
有用性の気道炎症による評価

下田 照文
(国立病院機構福岡病院)
16年4月〜
19年3月


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