K・Kニュース vol.6(2004年7月号)


〜Page5〜

200字コメント

(今回も、9名の方からコメントを頂きました!)

○私のアレルギー研究

 私がアレルギー性鼻炎の研究を始めたのは、可也以前のこととなってしまった。昭和50年の前後と思う。当時はIgEの総量やRASTによる特異抗体の測定で、結構国際誌にも発表できた。もともと私は滲出性中耳炎を研究のテーマとしていたので、アレルギー研究はそれまでで発展しなかった。ただ、アレルギーが滲出性中耳炎の成因に挙げられたり、臨床的に両疾患の合併が多く診られるので、両者の関係を臨床的に、また動物モデルで研究した。
結局、I型アレルギーは滲出性中耳炎の成因ではないが遷延化因子であるとした。両者の合併が多いのは両疾患が共に小児期に多く発症することと、遷延化は鼻アレルギー反応は一時的にせよ、耳管機能を妨げるからである。
 アレルギー性鼻炎を合併した滲出性中耳炎ではアレルギー性鼻炎の治療も行うべしとした。

(茂木五郎)


○アレルギー性鼻炎

 アレルギー性鼻炎を学ぶようになって二十数年が経った。多くの新しい知見が報告され、人類が共有する知識は各段に広がり膨大になっている。その中で新しい治療法や薬剤も開発されてきたが、多くの患者が恩恵を受けるような根治的な治療法は未だない。
研究には常に多額の費用が必要になるが、癌のように致死的な病気ではないから後回しでも良い、とするのか、QOLを求める時代だからこそ優先させるとするのか、といった議論も政治・行政にはあるだろうが患者はそのような事情を理解しないし、単純に病気が治ればよいである。

 (鈴木正志)


○特徴的な街灯

 特徴的な街灯を取り付ける町が日本でも多くなった。アメリカのペンシルバニア州の東部にハ―シーという町がある。アメリカの代表的なチョコレートであるハ−シーチョコレートのハ−シーである。小さな田舎町ではあったが、とてもきれいで整っていた。チョコレートの製造過程を見学したり、きれいな公園や遊園地も心地よかった。この町の街灯はキスチョコの形をしていた。まっすぐに延びた道路の街路樹の緑も美しく、その緑にキスチョコ帽子をかぶった街灯が規則正しく並んでいる光景が目に焼きついている。

(古江増隆)

 

○日本小児アレルギー学会

 日本小児アレルギー学会では、「小児気管支喘息治療管理ガイドライン2002」を改訂し、2004年1月に「同・2004年改訂版」を出しました。
同時に、医療スタッフ、ならびに保護者や学校・幼稚園の先生、保育士、運動指導員などにも理解を深めてもらおうと、解説書「医療スタッフのための喘息ハンドブック2004」(協和企画、2,100円)と「患者さんとその家族のためのぜんそくハンドブック2004」(同、1,575円)を作りました。
日常生活の中で知ってもらいたい喘息に関する知識をガイドライン作成委員がわかりやすくまとめたものです。一般書店でも入手できます。

(西間三馨)


○医学生の英語読解力

 医学生の英語読解力の低さに唖然とし、初期配属実習でBasic Pathology(Robbins, 第7版)の輪読会をおこなうことにした。自分が学生時代に読んだもの(初版)とは隔世の感があり、図もカラー刷りでわかりやすく説明されていた。学生は前半は、遂語訳で速度が遅くかなり苦労していたが、後半は要約となり、かなりスピードアップした。
 学生に機会を与えることの重要性を痛感すると同時に、遥か自分の学生時代に輪読会につきあってくれた教授のことが大変有難く思い出された。

(藤原作平)


○科学と文化

 浅野次郎氏のエッセイに科学の進歩が人類を猿にするとあった。科学すなわち文明の発達が文化そして人を駄目にするという。
テレビやビデオ、携帯電話の発達によって、確かに読書や会話の機会が失われつつある。電子レンジの発明によって食文化が大きく変化し、それがアレルギーの増加に関与しているのかもしれない。
我々医師が人類の幸福のためと思って行っている医療はどうか。最先端医療が次々と開発される昨今、医療の本質を忘れることのないようにしたい。

(黒野祐一)

 

○アレルギー疾患のセカンドオピニオン

 医学の進歩は専門分科と同義語にとられる時代が続いて、研究も診療も臓器別になり人間全体を見ることが少なくなっている。治療はマニュアル化され、疾患別のクリニカルパスが生まれ、DRGがもてはやされ、ドクターショッピングは非難されている。
しかしそのために境界領域や全身性の病気が見逃されたり、骨の固定金属や義歯やピアスの金属アレルギーや食物や家具のアレルギー反應によるエピソードが急増している。セカンドピニオンが必要になってきたようである。

(岡崎禮治)


○JRの車中から

 JRの車中かられんげ畑を見つけドキリとした。長い間れんげ畑を見ていない。私の少年時代の原風景は一面のピンクのれんげ畑(正確にはれんげ田)で、春は毎日れんげに囲まれたあぜ道をとおって小学校に通った。ところでれんげの花粉アレルギーはあったのだろうか?と、ふと考えた。れんげはChinese Milk Vetchというのだそうだ。RASTの検査にはない。Pub Medで検索したが報告は見つけられなかった。
 れんげの花の中で転げまわって遊んでいた子たちは多かったはずだが、そのような話は聞いたことがなかった。れんげの可憐さを確認できた気がしてなんとなくほっとした。

(濱崎雄平)


○アトピーとのつきあいかた

 アトピー性皮膚炎には良い治療法があって一気に完治するというわけには参りません。ですから皮膚炎の症状を毎日観察して適切な外用薬で極力軽く抑えているうちに、いつの間にか自分から治る皮膚病だと理解していただきたいです。
 アトピー性皮膚炎全体の7割は小学校入学前に、9割は小学校卒業までに治ってしまいます。時間がかかりますが根気よく気長に炎症が軽いうちに手当てをすることだと思います。

(阿南貞雄)


吉田彦太郎先生を偲んで

阿南皮膚科医院 院長 阿南貞雄
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 日本アレルギー学会名誉会員、長崎大学名誉教授、吉田彦太郎先生は平成16年3月20日午前9時20分大腸癌のため永眠されました。享年73歳でした。先生は昭和6年2月22日神戸市須磨区でお生まれになり、丁度誕生日をお迎えになった直後でありました。今日の長寿社会からいって、まだまだ早いご逝去でした。

 先生は岡山大学医学部を昭和30年ご卒業後岡山大学医学部皮膚科泌尿器科教室に入局されましたが、昭和46年から2年間米国ペンシルバニア大学医学部皮膚科学教室へ留学され、帰国後は岡山大学医学部助教授を務めておられました。

 昭和52年長崎大学医学部教授として長崎に赴任され、平成6年社会保険広島市民病院病院長として転出されるまで17年間の長きにわたり教育、診療、研究のあらゆる方面で精力的にご活躍されました。学会活動としては、日本皮膚科学会はもとより、日本研究皮膚科学会、日本アレルギー学会の評議員や理事、日本アレルギー協会九州支部長として次々と要職を歴任され、とりわけ平成2年11月長崎市で開催された第40回日本アレルギー学会総会では会長を務められ、会長講演として「アトピー性皮膚炎の発症機序」を発表されました。又、先生は平成3年日本皮膚アレルギー学会がそれ以前の抗原研究会から全国学会へ移行するさいに中心的な役割を果たされました。

 吉田先生から教えを受けた数多くの先生方は現在各方面で活躍しています。先生のモットーで、先生の長崎大学での最終講義「考える皮膚科学」の大切さをかみしめながら、一同先生のご冥福を心よりお祈り申し上げたいと思います。  合掌


 

アレルギー談話室・ラジオ番組予定表

◆平成16年5月下旬以降の放送予定

回数
放送予定日
テ  ー  マ
講  師  名
所      属

1285

5月23日

日本アレルギー学会春季臨床大会トピックス

庄司 俊輔

国立病院機構 福岡病院アレルギー科

1286

5月30日

衛生環境とアレルギーの発症

西間 三馨

国立病院機構 福岡病院

1287

6月6日

アトピー性皮膚炎の新しい軟膏療法

古江 増隆

九州大学医学部皮膚科

1288

6月13日

漢方とアレルギー

江頭 洋祐

九州看護福祉大学

1289

6月20日

喘息の吸入療法

浅井 貞宏

佐世保市立総合病院内科

1290

6月27日

ラテックス(天然ゴム)とアレルギー

鳥山 史

長崎原爆病院皮膚科

1291

7月4日

喘息児サマーキャンプ

小田嶋 博

国立病院機構 福岡病院小児科

1292

7月11日

耳とアレルギー

鈴木 正志

大分大学医学部耳鼻咽喉科

1293

7月18日

水泳と喘息

津田 恵次郎

北九州市開業

1294

7月25日

肝臓とアレルギー(T)

清家 正隆

大分大学医学部内科

1295

8月1日

肝臓とアレルギー(U)

下田 慎治 

九州大学医学部内科

1296

8月8日

日光とアレルギー

戸倉 新樹

産業医科大学皮膚科

1297

8月15日

ペットとアレルギー

下田 照文

国立病院機構 福岡病院アレルギー科

1298

8月22日

睡眠と喘息(T)夜間睡眠障害

津田 徹

津田内科病院

1299

8月29日

睡眠と喘息(U)全般

十川 博

九州中央病院心療内科

1300

9月5日

蜂毒とアレルギー

浦田 誓夫 

玉名市開業

1301

9月12日

秋の花粉症

宗 信夫

福岡市開業

1302

9月19日

アレルギーの免疫療法

石川 哮

熊本大学名誉教授

1303

9月26日

扁桃とアレルギー

黒野 祐一

鹿児島大学医学部耳鼻咽喉科

1304

10月3日

うつと喘息

永田 頌史

産業医科大学精神保健学

1305

10月10日

蓄膿症とアレルギー

鈴木 秀明 

産業医科大学耳鼻咽喉科

1306

10月17日

喘息の治療(成人)

井上 博雅

九州大学医学部呼吸器内科

1307

10月24日

喘息の治療(小児)

濱崎 雄平

佐賀大学医学部小児科

1308

10月31日

難治ぜんそく

相澤 久道

久留米大学医学部第一内科

1309

11月7日

日本アレルギー学会トピックス

小田嶋 博

国立病院機構 福岡病院小児科

1310

11月14日

食物アレルギー(T)診断

柴田  瑠美子

国立病院機構 福岡病院小児科

1311

11月21日

食物アレルギー(U)治療

柴田  瑠美子

国立病院機構 福岡病院小児科

1312

11月28日

かぜ薬と喘息

井上 とら夫

東福岡和仁会病院内科

1313

12月5日

風邪とストレス

久保 千春

九州大学医学部心療内科

1314

12月12日

ストレスとかゆみ

須藤 信行 

九州大学医療経営・管理学

1315

12月19日

高齢者のかゆみ

阿南 貞雄

長崎県開業

1316

12月26日

暖房とアレルギー

鶴谷 秀人

東福岡和仁会病院内科

◆平成17年以降の放送予定

回数
放送予定日
テ  ー  マ
講 師 名
所   属

1317

1月2日

新春放談

石川 哮
西間  三馨

熊本大学名誉教授
国立病院機構 福岡病院


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