K・Kニュース vol.7(2004年12月号)


〜Page5〜

200字コメント

(今回は、12名の方からコメントを頂きました!)

○小児の喘息死の激減

 2003年の喘息死を分析してみて、私が小児科医になってすぐの頃の状況と比較すると、正に隔世の観がある。1960〜70年代の喘息死の急増は男子10〜14歳の年齢層で、1969、1970年に人口10万対1.8とピークを迎えたが、2003年は0.06となっている。喘息の有症率はこの20年間で2〜2.5倍増加しているにもかかわらずである。実に喘息児における死亡は1/50〜1/100以下に低下したという驚異的減少率である。

 さて、喘息治療管理ガイドラインのさらなる普及・浸透で、いつ、究極の0となるか。

(西間 三馨)


○下手になった日本語の書き方

 アレルギー疾患の増加に伴って他の医療機関から紹介されて来る患者も多くなった。殆んどの人が紹介状持参だが、その内容が時代と共にお粗末になってきたのに気付かされている。字が下手でワープロを用いても誤字当て字が多く、無用の数字を羅列したがり、文脈は支離滅裂で、とても高学歴のものとは見えないものまである。
 日本語のリテラシーがここまで落ち込んだのは文部科学省の指導要項通りの読書や習字の学習が行われず、「ゆとり教育」と嘯いてきた教育の失敗に責任がある。

(岡崎 禮治)


○ロブスター

 ロブスターといえばおいしい爪を想像する。ロブスターを注文して爪が入っていなかったら、皆さん、がっかりすると同時に怒りがこみ上げてきませんか? カリブ海のとある島でわが家族はこの状況におかれました。 

支配人をテーブルに呼びつけガミガミどなりました。とまどった顔の支配人はやがてやさしくにこりとして一言。「日本人ですか?」 「カリブ海のロブスターは日本と一緒、爪がありません。」なんと南の島のロブスターはイセエビでした。

(古江 増隆)


○腹痛・倦怠感

 腹痛・倦怠感などの不定愁訴を主訴に外来受信するこどもの増加が問題になっていましたが、このところそういう患児の外来受診が減少しているように感じられます。数年前は喘息・アトピー性皮膚炎に不登校がらみの患児の入院がかなりあったのですが、それも減っています。
 調査をしてみましたところ、全国統計でもこの2年間は不登校児童の数が連続して減少しています。学校や家庭での早期の支援策が功を奏し始めているのでしょうか?改善に向かっての徴候であればよいのですが……

(濱崎 雄平)


○医師数の不足

 今年から施行された卒後研修の必須化に伴って、多くの大学病院が医師数の不足に悩まされている。
 研修医の大学偏重を改善するという点では成功したかに見えるが、先日報じられ来年度の研修志願状況では、研修医の大都市集中化がより顕著になってきた。
 このままでは地方都市の病院はますますマンパワーを失うことになる。机上の政策の稚拙さに厚生省がどう対応するのか。我々も自らの努力と工夫で地方医療を支えなければならない。

(黒野 祐一)

 

喘息の苦しみ二題

◎私が呼吸器を専攻しようと思った契機には、父が喘息を持病にしていたこともある。小マッチ箱くらいの扁平なガラスの吸入器に2連球からエアを送るものだが、勤めから帰宅してそのまま玄関の框に腰掛けたなりカバンからセットを開く。
 セットには褐色の瓶がありスポイドで少量を吸入器に移して2連球のゴムチューブをつなぐと端末のカフをプカプカさせる。数秒を待たずエアゾルが発生し父は瞑目状態で1分ほど右手のカフ操作にふけり、いっぱいに膨らんだリザーバーに握りかえ、加圧エアの終わるころには喘息はすっかり消えるのに感心した。薬液はボスミンだったようで、当時、九大附属病院の恵愛団にいたので親しくしてくれた楠教授か小野寺教授から最新のポータブル吸入器を処方してもらったもののようである。
 自宅までの帰路は篠栗駅から真西に10分余の県道を歩まねばならない。冬は、強い西風に直面するのでマスクは欠かしてはいなかった。吸入が終わって息切れがおさまるまで家族とは言葉を交わすことはできなかった。
 気の毒な病気だと思ったが、専門医となって多くの患者さんを診るにつけて父の喘息は制御しやすい発作型で、まだ良いほうだと感じる。

◎中島敦という昭和のはじめに30間もなくの歳で夭折した作家がいた。「李陵」 「名人伝」あるいは「悟浄出世」など、三代続く漢学者の家ゆえ漢籍を自由にし、作品の多くがそこからきているが、「カメレオン日記」など彼が南洋庁の職員として赴任していた際に書かれた名作もある。
 伝記によると日本に戻ったのち、持病の喘息発作で急死している。写真でみると実直端正な容貌の人である。作品の題材が広くはないが名文ばかりである。
 全集3巻があるが、私は2巻目を持たない。高価なのと日記の軽視のためだったが、日記には持病の苦しみが記されているはずだ。その苦しみを少しでも私は知りたい。     

 (井上 とら夫)


○COPD及び喘息に対する抗炎症薬
  :Roflumilast(PDE4抑制薬)

 2004年5月25日、ATS(American Thoracic Society)においてライデン大学のKlaus Babe教授がALTANA製薬が開発したRoflumilastのCOPDにおける二重盲検法による治験成績を報告したらしい。それによると欧州11ヶ国の中等症から重症のCOPD患者に1400人に対し、24週間に及ぶ治験の結果、Roflumilast250mgと500mg投与群においてプラセボに対しそれぞれp<0.0134並びに0.0001の有意差を持って1秒量の改善が得られたと言う。また、Roflumilast500mg投与群ではプラセボ群に比し、24週間の治験期間中、COPD急性憎悪回数が34%減少した。
 患者の薬剤コンプライアンスは良好で副作用の頻度も低く、脱落者は僅かに3%以下である。キサンチン誘導体による抗炎症作用が叫ばれて久しいが、或はついにそのPDE4抑制薬の臨床応用が実現する可能性が高い。

(宮城 征四郎)


○服薬のアドヒアランス(自主服薬)を高める

 喘息に限らずアレルギー疾患を診療していて、いつも気になることは患者さんの服薬率が人によりまちまちであることだ。最近私は再来受信の際に必ず「お薬はどれか余っていませんか?」と聞くことにしている。人によってはこちらが驚くほどきちんと飲んでいるケースもあるが、大半の人は少し病状が良くなると薬を止めたり、飲むのを忘れてしまうことが少なくない。
 これが人の性というものだとは思うが、喘息のような慢性疾患においては、行く行くリモデリングをきたす予後を考えると、ステロイド吸入薬のような維持薬・基礎治療薬の服薬率を保つことはとても重要だと思う。最近、服薬のコンプライアンス(指示による服薬順守)を本当に保つためには、一歩進んで患者さん自身が自分の病気を正しく理解し積極的に服薬する姿勢、いわゆるアドヒアランス(自主服薬)をいかに高めるかが大切と言われている。飲む飲まぬは個人の性格だからと諦めずに、われわれ医療者側も努力して患者さんの前向きの自己啓発に協力していかなければならないと思う。

(江頭 洋祐)

 

○才能が集まり発展する社会

 アテネオリンピックでは、日本は多種目にわたりすばらしい成績をあげ私たち日本人も元気づけられた。これらの成績には、日本人の技術や体力の向上とともに、戦略立案やスポーツ医学の発展が大きく貢献しているだろう。
 今後、日本が個人競技だけではなくチーム競技にても多くのメダルがとれる時代が来た時に、日本が「個人の才能に頼って発展してきた社会」から「才能が集まりチームとして発展できる社会」に脱却できていることを期待したい。私たちがそのような社会・医療システムを目指して仕事をすべき時代が来ている。

(興梠 博次)


○人の病を治す為の研究

 アレルギー学研究は益々こまかい分子生物学/分子遺伝学へと突き進んでゆくが、その基礎的研究が臨床に役立つのは、その中のほんの一部であることも皆知っている。昨年数十億円の国予算で「免疫・アレルギー総合研究センター」が設立された。
今までの多くの研究所や大学が楽しんできたような「研究のための研究」の施設がもう1つ出来たのではなく、人の病を治す為の研究を行う施設というのが設立の大前提である。
 ここで行われる研究の幾つかは、センター外の専門施設と連携して臨床・医療に役立てることをねらった所謂 translational projects を実行するというのが、設立準備会の一員であった私の耳にはっきり入っている約束である。裏切られないように皆で注目していよう。

(石川  哮)


○Th1とTh2

 主たるサイトカイン産生の面からヘルパーT細胞はTh1細胞とTh2細胞にわけられる、とマウスで提唱されて10年以上が経つ。ヒトの疾患もどちらかが優位ではないかと研究が重ねられてきたが、そう簡単ではない。その中でアレルギー疾患はTh2優位であることが比較的はっきりしている。一方、膠原病では間接リウマチはTh1優位である。
 確かにリウマチと喘息の両方が重症という患者はほとんど見ない。私はアレルギー体質である。クシャミをして、皮膚をボリボリ掻きながら、自分はリウマチにはならないだろうと希望的に考えているが。

(長澤 浩平)


○茂木五郎先生の冥福を祈る

 茂木五郎先生が6月末に遠くに旅立たれた。
 私は、大分アレルギー講習会の発起人、倫理委員会の長および病院長としての茂木先生しか知らないが、大分大学付属病院を少しでもよくしようと粉骨砕心され、殆ど殉職に近い最期だと思った。
 患者さんからのクレームがあった時やインシデント発生時には直接電話で呼び出され、すぐさま対処方法を求められたり、退院時サマリーがたまっているとお叱りを受けたりで、お心を煩わせてばかりいたと思うが、不思議にネガティブな感情は残らなかった。
 重要な案件についてはメールで皆に意見を求められ、我々の意見も大事にされた。大分大学医学部にとってはかけがえのない大きな人であった。心から先生のご冥福をお祈りしたい。

(藤原 作平)


茂木五郎先生の逝去を悼む

 大分大学名誉教授、前大分医科大学医学部附属病院長、茂木五郎先生は病気療養中でありましたが、去る6月24日御歳70歳でご逝去されました。ここに謹んで哀悼の意を表します。

 先生は昭和35年に山口県立医科大学医学部医学科をご卒業後、昭和40年に同大学大学院を修了されました。同大学在任中、中耳炎の中耳貯留液中に分泌型IgAが存在することを世界で初めて明らかにし、中耳における抗体産生と中耳粘膜の分泌能を免疫化学的に証明されました。

 昭和56年に大分医科大学耳鼻咽喉科初代教授として赴任されるや、上気道免疫特に粘膜免疫機構の仕組みを明らかにし、粘膜免疫を賦活、利用することにより中耳炎を予防するワクチン開発の基礎を確立されました。この功績により平成元年第90回日本耳鼻咽喉科学会総会での宿題報告の名誉を与えられ、多く国際学会と全国学会を主催され、世界に大分の茂木として認知されるとともに、平成9年には日本鼻科学会理事長、平成12年には日本耳鼻咽喉科学会理事に就任され、さらに、(財)日本アレルギー協会九州支部の役員として、日本のみならず世界の耳鼻咽喉科医のトップリーダーのお一人になったのであります。

 平成10年からは、附属病院長として時代が求める病院の理想像を追求し、病院経営の健全化と医療安全の確率にその手腕を存分に発揮され、全国でも注目を浴びる優秀な病院を創り上げられました。医学・医療の多難な時代故に先生にはこれまで以上にリーダーシップを発揮してご指導を賜りたかったのですが、この度のご訃報は極めて残念でなりません。

 今はただ心からご冥福をお祈り申し上げます。どうぞ天国で安らかにお眠り下さい。

大分大学医学部耳鼻咽喉科 教授 鈴木正志


 

アレルギー談話室・ラジオ番組予定表

◆平成17年(8月まで)の放送予定

回数
放送予定日
テ  ー  マ
講  師  名
所      属

1317

1月2日

新春放談

石川  哮
西間 三馨

熊本大学名誉教授
国立病院機構福岡病院

1318

1月9日

高齢者のアレルギーと喘息

鶴谷 秀人

東福岡和人会病院内科

1319

1月16日

乳幼児のアレルギーと喘息

津田恵二郎

北九州市開業

1320

1月23日

かぜ・インフルエンザと喘息

相澤 久道

久留米大学医学部第一内科

1321

1月30日

今年のスギ花粉症

岸川 禮子

国立病院機構福岡病院アレルギー科

1322

2月6日

スギ花粉症の治療

宗  信夫

福岡市開業

1323

2月13日

アレルギー週間

西間 三馨

国立病院機構福岡病院

1324

2月20日

アトピー性皮膚炎(成人)

古江 増隆

九州大学医学部皮膚科

1325

2月27日

アトピー性皮膚炎(小児)

古江 増隆

九州大学医学部皮膚科

1326

3月6日

ストレスとかゆみ

久保 千春

九州大学医学部心療内科

1327

3月13日

予防接種とアレルギー

岡田 賢司

国立病院機構福岡病院小児科

1328

3月20日

サプリメントとアレルギー

江頭 洋祐

九州看護福祉大学

1329

3月27日

食物アレルギー

柴田留美子

国立病院機構福岡病院小児科

1330

4月3日

ペットとアレルギー

下田 照文

国立病院機構福岡病院内科

1331

4月10日

衛生仮説

小田嶋 博

国立病院機構福岡病院小児科

1332

4月17日

蓄膿症とアレルギー

黒野 祐一

鹿児島大学医学部耳鼻咽喉科

1333

4月24日

思春期喘息

十川  博

九州中央病院心療内科

1334

5月1日

ストレスとアレルギー

久保 千春

九州大学医学部心療内科

1335

5月8日

肝臓とアレルギー(T)

横田 昌樹

国立病院機構九州ガンセンター消化器内科

1336

5月15日

肝臓とアレルギー(U)

杉本 理恵

国立病院機構九州ガンセンター消化器内科

1337

5月22日

眼のアレルギー

松井 孝明

福岡市開業

1338

5月29日

金属とアレルギー

佐藤 伸一

長崎大学医学部皮膚科

1339

6月5日

蕁麻疹

阿南 貞雄

長崎県開業

1340

6月12日

肺炎とアレルギー

井上 博雅

九州大学医学部呼吸器内科

1341

6月19日

耳とアレルギー

石川  哮

熊本大学名誉教授

1342

6月26日

アレルギー学会のトピックス

庄司 俊輔

国立病院機構福岡病院アレルギー科

1343

7月 3日

喘息児サマーキャンプ

久田 直樹

国立病院機構東佐賀病院小児科

1344

7月10日

日光とアレルギー

野中 薫雄

琉球大学医学部皮膚科

1345

7月17日

シックハウス症候群

西間 三馨

国立病院機構福岡病院

1346

7月24日

喘息の診断(成人)

浅井 貞宏

佐世保市立総合病院内科

1347

7月31日

喘息の治療(成人)

木下 正治

福岡県開業

1348

8月7日

喘息の診断(小児)

西尾  健

福岡大学医学部小児科

1349

8月14日

喘息の治療(小児)

小田嶋 博

国立病院機構福岡病院小児科

1350

8月21日

鼻アレルギーの薬物治療

鮫島 靖浩

熊本大学医学部耳鼻咽喉科

1351

8月28日

鼻アレルギーとQOL

石川  哮

熊本大学名誉教授


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