K・Kニュース vol.9(2006年1月号)


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第35回 喘息児サマーキャンプ

(独)国立病院機構福岡病院 統括診療部長 小田嶋 博
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 福岡病院主催のサマーキャンプは、今年で35回を迎えました。例年と同じように、小学生70名を連れ、約35人のボランティアと医師4名、看護師10名の約120名で福岡市郊外の夜須高原で実施しました。
内容は、喘息教室、トレーニング、ウォークラリー、肝試し、キャンプファイヤー、運動負荷テストと、喘息のキャンプであるという特質とともに、一般のキャンプと同様の内容を今年も実施しています。
毎年のことですが、ボランティアの学生たちの協力には本当に頭が下がる思いです。彼等は実に忍耐強く、子供達と伴に生活し、彼らの悩みを聞き、よく考えてくれます。逆に言えば、今の若者の素晴らしさとそれを導き出すことのできる子供達の素晴らしさでしょうか。

 今年はエゴグラムの検討が更に深まり、喘息の自己管理とエゴグラムとの関係について、新しい興味ある結果も得られました。今後、ますます病−診、病−教の連携の下に発展させていくことが必要と考えています。

 関係各位のご協力にこの場をかりて深くお礼申し上げます。来年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。


第27回 太陽の子サマーキャンプ

(独)国立病院機構東佐賀病院 小児科医長 久 田 直 樹
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 今回はぜん息児の参加者が15人と、こじんまりしたものであったが、実際の内容は少し波乱に満ちたキャンプとなった。参加者のほとんど全員が何らかの長期管理薬を服薬しており、特に吸入ステロイドが7割を占めていた。

 ぜん息児1人あたりのスタッフが約2人となり、きめ細かな鍛錬や服薬指導ができ、キャンプ後半のフローボリューム曲線による末梢気道の改善が全員にみられた。またスタッフは子どもと濃密に接触することとなり、そのせいか、一連の出来事が次々とおこった。
学生ボランテイアが子どもを喜ばそうと馬跳びでの一回転着地に失敗して足関節を痛めたり(翌日病院に搬送して骨折と判明、手術となった)、子ども達を事故にあわせたらいけないと過度に緊張して過換気発作をおこしたり、相撲や野球ごっこに付き合って過労でダウンしたりなど、むしろ成人の方に手がかかった。

 しかし看護学生と医学生にとっては清拭や体位交換、シーネ作りからバイタルサインのとり方、ペーパーバッグ再呼吸法などのいい実習できた。逆に子ども達はみんな元気でキャンプを終えたのは言うまでもない。

 またほとんどが他院で治療を受けており、吸入ステロイドの急速な普及を実感できた。しかし吸入手技については半数以上になんらかの問題点があり、必要最小限の投薬量にするために外来でチェックしなければならない。
一世を風靡したインタール定期吸入は皆無であった。 

 


200字コメント

(今回は、8名の方から9件のコメントを頂きました!)

○コンピュータとインターネット

 コンピュータとインターネットは、情報処理能力が非常に高度であるとともに、いかなる場所でも電話回線があれば世界の最新情報を得る事ができ、また、自分からも発信できる革命的な情報技術である。
 この大きな発展は、画像診断学、分子生物学、遺伝子学、創薬、治療学の進歩にも貢献している。また、この変化のスピードは医学史において例をみないものであろう。
 医療に携わるものは、変化の激しい世界の最先端の医療情報を収集し実践しなければならない。
 今、この転換期を先取りする情報交換ができる先達が必要である。

 (興梠 博次)


○ガイドライン

 アレルギーの診断・治療のガイドラインができてきている。これによって標準的な治療が示され、多くの治療者がこれに基づいて治療を行っていると思われる。気管支喘息についても2006年に改訂版が発刊される予定である。
 ところで、近年医療訴訟が毎日のように報道されている。患者さん側も病気のガイドラインを知ってきており、ガイドラインで示されるような治療が的確になされないと訴訟の対象になりうる。治療者側もいや応なしに研鑽し続けることが必要な時代となってきている。

(久保 千春)


○天候異変とアレルギー

  地球の温暖化が進行中で今年の真夏日は観測史上最長となり、季節はずれの櫻の狂い咲きがマスコミで頻繁に取り上げられたのは9月初旬であった。
 そのころからアレルギー外来の花粉症の患者さんが増え、私自身もくしゃみ、鼻水、流涙に悩むようになった。昔からスギ花粉症は2月から3月にかけて多発していたのだが、天候異変の今年は9月から10月にかけて桜と共に杉や檜が雄花をつけたらしい。世の中の病気も地球規模で動いている。

(岡崎 禮冶)

 

○長白山の天池を訪問

 長白山の天池を訪問したことがある。長白山の頂にできた火口湖で、水面の海抜は2150メートル、周囲の山と青い空を紺碧の湖面に映した神秘的な湖である。この長白山の麓はとても田舎で、幼い頃の実家近くの風景に似ていた。
 面白いことに、道端の犬がみんな狆(チン)なのである。ご存知のように毛はふさふさの小型犬で、丸い目は飛び出しそうに大きく、鼻はひしゃげた愛らしい犬である。
 日本では昔から愛玩犬である。おそらくこの地域から日本に献上されたに違いない。

(古江 増隆)


○身近なキャンペーンの継続

 医学部の学園祭(むつごろう祭)に小児ぜんそくの実践的市民講座を行なった。スパイロメーターを用いた肺機能検査と、ダニ、ネコ、スギ、アルテルナリア、ランパクの5抗原エキスを用いた皮膚プリックテストをアレルギーグループの4名の医師と研修医6名で実施した。無料でアレルゲンの検査ができるとあって大盛況でお昼を過ぎたところで用意した抗原液が終了、アレルギー疾患に対する感心の高さをうかがわせた。
 午後にはお母さん方を対象にわかりやすいこどものアレルギーについての講演会をグループの女性医師が行い、こちらも盛況だった。
 身近なキャンペーンを機会あるごとに続けるつもりである。

(浜崎 雄一)


○次から次に「済し崩し」

 広辞苑によれば「なしくずし」とは借金を少しずつ返済すること、物事を少しずつ済ましてゆくこと、漢字にすれば「済し崩し」とある。 
 一度にドンとくるとショックが大きいので、少しずつ小出しにして目先をくらます意味で使う言葉でもある。「医療費自己負担額を1割から2割、2割から3割へと増して、済し崩しに患者の負担増へと持ってゆく」、「消費税増を20年かけて済し崩しに15%にする」、「自衛隊の自国防衛から海外派遣、アジアとの交戦を予想した米軍との合同演習へ、自衛隊を自衛軍として武力を携えた国連部隊参加へ、一歩一歩済し崩しに軍国日本へと進んでいる」等々時事問題だけでも例文に事欠かない。

(石川  哮)

 

○韓国の大学病院を見て・・・

 先日、韓国を訪ねる機会があり、その折に今年5月に開院したばかりの延世大学附属病院を見学した。斬新なレイアウトは言うまでもなく、ITを駆使した完全ペーパーレス、フィルムレスのシステムには驚かされた。受付のスペースが非常に狭いことが不思議であったが、外来受診はすべて携帯やインターネットを使っての予約制で、会計はクレジットカードで行われると聞いて再度驚いた。
 独法化によって新築どころか改築の見込みも立たなくなった我が大学病院を見てむなしさが募るばかりである。

(黒野 祐一)


○学生の嗜好傾向と矛盾

 新臨床研修制度での3回目のマッチングが終了する。徐々に学生の嗜好傾向が明らかになってきた。
 都会嗜好、高収入嗜好である。これが意味するところは、地方国立大学法人医学部附属病院を希望する学生は減少し、地方の地域医療を支えられなくなるということである。
 しかし、この研修制度の導入を決めたものが、その国立大学法人医学部に地域医療への貢献を要請する。
 敵を攻めておきながら塩をくれと言っているようなものである。

(鈴木 正志)


○日本語の使い方の混乱

 紀宮様が目出度く結婚、民間人黒田清子さんになられた。ニュースを聞いて不思議に思った事がある。清子様ではなく、清子さんと呼ぶのだそうである。何故清子様ではおかしいのか、いけないのか、とんと理解できない。
 それなら「ヨン様」はどうなるのか? 特別ご身分の高い人とも思えないのだが、「ヨンさん」では音の響きがおかしいのか、からかった呼び方をわざわざしているのかもしれない。
 「患者様」はどうなるのか? 「患者さん」では失礼なので様をつけて呼びなさい、と云ったのは誰なのか? 日本語の使い方の混乱がやたらと耳について仕方がない。歳のせいかもしれない。

(石川  哮)


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